『 人 魚 の 姫 』
前回のお話し 「人魚の姫 1」 「人魚の姫 2」 「人魚の姫 3」 「人魚の姫 4」
やがて一番下のお姫様も、15歳の誕生日を迎えました。
『もうお前も大きくなりました。』
お姫様たちのお祖母様の人魚が言いました。
『さあ、ここにおいで。
お化粧をしてあげましょうね。
お前のお姉さんたちにも、
そうしてあげたのだよ。』
そう言うとお祖母様の人魚は、白百合の花輪を
一番下のお姫様の髪に、付けてやったのです。
みるとその花びらは、
一つ一つが真珠を半分にしたものでした。
それから、お姫様が高い身分であることを表すために、
お姫様の尻尾に、8つの大きな牡蠣を鋏みました。
『お祖母様、痛い!』
『立派になるためには、
少しの痛みは我慢せねばなりませんよ。』
お姫様は、そんな痛いお飾りなんかを、
どんなに、はらい退けたかったことでしょう。
重たいお化粧の花輪も、取ってしまいたいと思ったのです。
そんな物よりも、お庭に咲いている赤い花の方が、
お姫様はずっと良く似合うに決まっているのです。
しかしそうしている間に、
全ての牡蠣の貝が尻尾に付いたのでした。
もう今更、これらのお化粧を全て取り去るよりも、
海の上の世界が、今は待っているのです。
『では、行ってまいります!』
一番下のお姫様は、元気良く、
透き通った泡のように軽やかに、
水の中を泳ぐと、上へ上へと昇って行ったのでした。
お姫様が海の上に頭を出したとき、
ちょうどお日様が沈みました。
けれども雲と言う雲は、まだばら色に、
あるいは金色に照り映えていました。
薄い桃色の空には、
宵の明星(よいのみょうじょう・金星の事)が
明るく、美しく瞬きはじめた所です。
風邪は穏やかで、空気は清々しく、
海の面(おもて)は鏡のように静かでした。
向こうの方に3本のマストの大きな船が見えました。
風が少しもないので、帆はたった1つしか上げていません。
その周りの綱具(つなぐ)や帆げたの上には、
水夫たちが座っていました。
船からは音楽と歌も聞こえてきます。
その内に、夕闇が濃くなってくると、
色とりどりの何百もの提灯に火が入りました。
その様子は、まるで万国旗が
風にひらひら、翻っているように美しかったのです。
人魚のお姫様は、
船室の窓の直ぐ傍まで泳いで行きました。
身体が波に持ち上げられる度に、
透き通った窓ガラスを通して、中を覗く事が出来ました。
そこには綺麗に着飾った人達が大勢いました。
中でも美しく見えたのは、
大きな黒い目をした若い王子でした。
年のころは16くらいでしょうか?
それより上には見えません。
今日は、この王子の誕生日だったのです。
それでこんなに賑やかに、お祝いの会が開かれていたのです。
水夫たちが甲板で踊りをはじめました。
そこへ若い王子が出てきますと、
花火が百以上も、空高く打ち上げられました。
その為、当たりが真昼のように明るくなりました。
人魚のお姫様はビックリ仰天。
水の中に潜り込みました。
でも直ぐまた頭を出してみました。
と、どうでしょう。
空のお星さまが、みんな、
自分の方へ落ちて来るようです。
お姫様は、花火を一度も見たことが無かったのです。
幾つも幾つも、シュっシュっと、
大きなお日様の様な花火は、
音を立てながら空の上を回りました。
素晴しい火の魚が、青い空の上に飛びあがりました。
そうしたすべてのありさまが、
澄み切った静かな水面に映し出されました。
~今日は、ここまで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
