『 見 る な の 花 ざ し き 』
前回のお話し 「見るなの花ざしき 1」
次の間は、若者がこの数日泊まっている、
梅の花の部屋です。
その梅の間の向こう隣りは、桜が満開な上に、
黄色の菜の花も辺り一面に咲いている
春爛漫の素晴しい景色の部屋でした。
4番目の部屋は、赤や白の牡丹が咲き競っておりました。
5番目は、紫の菖蒲や、白い菖蒲が湖沼に揺れております。
6番目は、1本の立派な藤が蔓を棚いっぱいに伸ばし、
淡い紫や、白い長い房がいくつもいくつも、
棚から垂れ、風に靡(なび)いておりました。
7番目の部屋には、可憐な萩の花が咲いておりました。
8番目は、十五夜のお月見の部屋でした。
9番目は、白や黄色、それに赤など
色とりどりの菊が、野に咲き乱れている風景です。
10番目の部屋には、赤や黄色に色づいた、
椛(もみじ)や楓(かえで)、銀杏(いちょう)など
美しい紅葉の里山の風景が施されています。
11番目は、新嘗祭、豊穣の祝いの席の風景です。
12番目の部屋の中は、猛吹雪の枯れ野原でした。
この屋敷の部屋は、
それぞれ1月から12月までの風景が施された
それは見事な部屋が続いており、
若者は、女に一番奥の13番目の部屋だけは
「見るな」と言われたことを忘れておりました。
そして若者は、最後の13番目の部屋をも
開けてしまったのです。
その最後の13番目の部屋には、
再び梅の花が咲いておりました。
そしてその梅の木の1本に、鶯がおりましたが、
鶯は、襖が開いたことに驚き、
枝の間を、あわただしく飛び回りました。
若者は部屋に入ると、初めに鶯が居た場所を覗きました。
そこには小さな枝で作られた巣があり、
中には卵が12個、産みつけられていたのです。
それを見たとたん、若者は、女に
この部屋は見るなと言われたことを思い出しました。
若者は慌ててその部屋から出ると、そっと襖を閉め、
数日泊まっている2番目の梅の間に戻り、
何事も無かったかのように、女が帰るのを待ちました。
やがて女は、再び降り出した雪の中を帰ってきました。
そして2番目の梅の間の、若者の部屋を訪れると、
『決して見ないでと言ったのに、
あなたは約束を破り、
一番奥の13番目の部屋を見ましたね。』
そう女は、悲しい目をして訴えたのです。さらに、
『私は、あなたに可愛がってもらっていた鶯です。』
こう女が言うと、家は消え、
若者も女も枯れ野原に立っていたのです。
『私は、あなたの苦労を癒そうと、
春の女神様から、「天のお座敷」をお借りし、
これからずっと、あなたと一緒に
楽しく暮らそうと思っていたです。
しかし、あなたが約束を破ったからには、
もう私は、人間の姿で居ることは出来ません。
私は、元の姿に戻らねばなりません。』
そう言うが早いか、女はたちまち鶯に変わり、
雪の中、飛び去って行ったのでした。
『待ってくれ、すまなかった。
どうか、戻って来ておくれ。
そして一緒に故郷に戻って、もう一度やり直そう!
私の元に戻ってきておくれ!』
若者は、謝りながら鶯を呼び、
そのまま枯れ野原を彷徨い歩きまわりました。
しかし鶯の姿を、二度と見ることはできませんでした。
「見るなの花座敷」 おしまい。
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おわりっですっ。
