『 池 に 住 む 水 の 精 』



前回のお話し  「池に住む水の精 1」
「池に住む水の精 2」  「池に住む水の精 3」  「池に住む水の精 4」





 妻は、大声で老婆に助けを求めると、

たちまち妻は、ヒキガエルに、

夫は、普通の小さなカエルに変ってしまったのです。

その途端、2人は大波に飲みこまれてしまいました。

しかしカエルに変身した今、

大水は、2人を殺すことはできませんでした。



 ですが悲しい事に2人は、

別れ別れに、遠く引き離されてしまったのです。



 やがて水が引いて行きました。

そして2人の足が、地面に着いた時、

2人とも、もとの人間の姿に戻りました。

が、2人とも、自分が今、何処に居るのかが

サッパリわからなかったのです。

お互いの相手も、どこに行ってしまったのかわかりません。

2人とも、全く見知らぬ、

別々の土地に流れ着いてしまったのです。

そして2人とも、沢山の人の中に居ました。

そこの人たちは、2人の生まれ故郷の場所を知りません。

勿論、2人が誰だかも知る由もありません。

2人のいる場所のあいだには、

いくつもの高い山や、深い谷が連なっており、

2人は、遠く離れ離れです。



しかし2人は、尚も生きて行かねばなりません。

生きるためには、夫も妻も、

今は、何か仕事をするしかありませんでした。



 2人は羊飼いになるしか、道がありませんでした。

それからの2人は、

何年もの間、羊の群れを追いながら、

野や森を歩きまわりました。

2人とも、いつも相手を想い、

恋しさと、悲しさで胸が張り裂けそうでした。



 やがて何度目かの春がやってきました。

地面を割って、色鮮やかな草の芽が元気に飛び出てきます。

ある日、夫と妻は、それぞれの羊の群れを追って、

自分たちの住む村の外へ出ました。

何とこの時、物のはずみで

2人はばったりと出会ったのです。



 夫が遠くの山道に、羊がいるのを見つけたので、

そちらへ、自分の羊たちを移動させたのです。

夫が見つけた羊たちは、

妻が追っていた羊たちだったのです。



 そうして2人は、谷あいで出会ったのです。

しかし、月日が流れていたためか、

顔も服も汚れきっていたためか、

お互い、相手が誰だか見分けがつかずにいたのです。

でもこれからは、お互い独りぼっちで羊を追うのでは無く、

話し相手が居ると思うと、2人の心は慰められました。

その時から毎日、2人は並んで羊を追うようになりました。

お互いに、余り話はしませんでしたが、

何となく互いに、心が安らかになるように感じていました。



 そんなある晩のことです。

空には、真ん丸のお月様が顔を出していました。

2人の羊たちは、すっかり寝てしまい、

起きているのは、男の羊飼いと女の羊飼いだけでした。

男の羊飼いは、ポケットから笛を取り出すと、

綺麗だけど、悲しげな音色の歌を吹いたのです。

笛を吹き終えて気がつくと、

女の羊飼いが、声を殺して泣いていました。



『どうして泣くのです?』



男が尋ねると、



『私は大切な人を救おうと、笛を吹いたことがあるのです。

 その大切な人の頭が、水の中から出た時も、

 やっぱりこんな満月の晩だったのです。

 それを思い出してしまいました。』



と、女は答えました。

男は驚き、女の顔を覗き込みました。

するとまるで、目の中の霧が晴れたように、

この羊飼いの女こそが、

自分の愛する、あの美しい妻であることがわかったのです。

女も、男の顔を見ました。

その時、真ん丸のお月様が、2人の顔を照らしたのです。

すると妻も、目の前の男が、

自分の大切な夫であることが、わかったのです。

2人は抱き合い、何度も何度もキスをしました。



愛する2人は、こうしてやっと巡り会えたのでした。



『池に住む水の精』 おしまいっ。




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おわりっ。
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