『 池 に 住 む 水 の 精 』



前回のお話し  「池に住む水の精 1」  「池に住む水の精 2」




 夢の中で妻は、大きな岩が幾つも転がっている山道を、

不安な気持ちで、上へ上へと登って行きました。

そこにはゴツゴツの岩ばかりではなく、

鋭い棘が沢山ついている茨(いばら)や、

蔦などがたくさん生えていて、足に絡まりました。

その上、突然、大粒の雨降って来て、

妻の顔に容赦なく叩きついてきます。

大風も吹き始め、妻の長い髪の毛を乱しました。

小山の頂上に登り切ると、そこは景色が全く違いました。

空は真っ青で、空気はとても穏やか、

足もとを見ると、地面はゆるやかな坂で

色とりどりの花々が咲き乱れている、

美しい緑の草原だったのです。

妻は辺りを見渡すと、小さな家が一軒建っていました。

妻は小さな家に近づくと、戸をあけてみました。

すると小屋の中には、白髪頭の老婆が椅子に腰かけており、

妻に向って、にこやかに、



『こっちにおいで。』



と、手招きをしたのです。



 妻は、ここで目が覚めました。

周囲を見渡すと、もう夜が明けていたのです。

妻は、夢のお告げの通りにやってみようと考えました。

そして、山を登り出しました。

様子は、何もかも、夜中の夢で見た通り。

そして山を登り切った所に、やはり家があり、

老婆がニコニコと、妻を迎えると、

椅子を指さして、お座りと言いました。



『この一軒家を訪ねて来るからには、

 何か不幸な目にあったのだろう。』



と、白髪頭の老婆は言いました。

妻は泣きながら、身の上を話しました。

すると老婆は、



『心配するでないよ。

 私が手を貸してあげよう。

 ここに金の櫛がある。

 満月の晩まで待って、

 満月が出たら、あの池のほとりに座り、

 お前のその長い黒髪を、

 この金の串で梳くがよい。

 梳き終ったら、この櫛を岸に置くのだよ。

 それからどうなるかは、すぐにわかる。』



と妻に、これからやるべきことを教えました。



 妻は礼を言うと、急いで家に帰りました。

そして何日も、満月の夜が来るのを待ったのです。



 そしていよいよその夜が来ました。

キラキラと、真ん丸のお月様が大空に姿を現したのです。

妻は、老婆からもらった金の串を持つと、

急いで池へと出かけました。

そして池のほとりで座ると、

長い黒髪をその櫛で梳いたのです。

すっかり髪の毛を梳き終えると、

老婆に言われた通り、その櫛を池の淵に置きました。

すると間もなく、池の底の方が、

ざわざわとしてきたのです。

波が1つ起ると、岸の方へ押し寄せてきて、

その櫛を飲みこみ、池の底へと持って行ってしまいました。



 やがて櫛が、池の底に着いたであろう頃、

鏡のような水面が割れて、

夫である狩人の頭が飛び出しました。

夫は何も言わず、ただただ悲しげに妻を見つめました。

けれども、あっという間に、2つ目の波が寄せて、

夫の頭を飲みこんでしまうと、

何もかも、消えてしまったのです。

池は又、元のように静まり返ったのです。

そして真ん丸のお月様だけが、

水面にキラキラと映っていたのです。



~今日は、ここまで・・・~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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