『 1 2 人 の 王 子 』



前回のお話し  「12人の王子 1」
「12人の王子 2」  「12人の王子 3」





 ある時、下の2人はいつものように、

美味しいご馳走を作り、上の兄たちを待っていました。

やがて兄たちが帰り、いつものように、

皆で食卓を囲み、食べたり楽しくお喋りをしていました。

ところがこの魔法の家には、小さな庭があって、

そこに百合に似た、12本の花が咲いていました。

妹は、兄たちを喜ばせようと、

この12本の花を摘んだのです。

そして食事の後に、

兄たちに1本ずつプレゼントしようと考えたのです。

ところが、この花を折るか、折らないかと言う時、

12人の兄弟たちは、12羽の真っ黒いカラスになって、

森を飛び越して、どこかへ飛んでいってしまったのでした。

魔法の家も、それと同時に消えてしまいました。

可愛そうに、お姫様はひとりぼっちで、

深い森の中に取り残されてしまったのです。

辺りを見渡すと、少し離れた所にお婆さんが立っていました。



『お前は、一体何をしたのだい?

 どうしてあの綺麗な12本の白い花を、

 そのままそこに咲かせておいてやらなかっただい?

 さっき飛び立った12羽のカラスは、

 みんなお前さんの兄さんたちだよ。

 もう、カラスから、人間には戻れないよ。』



と、そのお婆さんが、お姫様に言ったのです。



驚いたお姫様は、泣きながら、



『何とかして、お兄様方を救いだす方法はありませんか?』



と、質問をしました。

するとお婆さんは、



『難しいね。

 ただ、助ける方法は、あるにはあるんだよ。

 しかしまだ幼いお前には、そんなこと

 とてもじゃないが、できやしないよ。

 いいかい、どうしても兄さんたちを救いたいのならば、

 お前は7年もの間、

 けっして誰とも、口をきいてはならないんだよ。

 笑う事さえも、許されないんだよ。

 もしも一言でも、話をしてしまったり、笑ってしまったら、

 もう決して、兄さんたちは、人間には戻れない。

 それどころか、お前のたった一言で、

 お前の兄さんたちは、皆、殺されてしまうだろうよ。』



と、言いました。



 これを聞いたお姫様は、



『わたしなら、きっと出来るわ。

 必ずお兄さんたちを助けるわ。』



と、心のなかで強く言いました。



 お姫様は、それから歩いて行くと、

高い高い木を見つけました。

そしてその木の上に座ると、

黙々と糸を紡ぎ始めたのです。



 ところがある日のことです。

狩りをするために、とある国の王様が、

この森の中に、やって来たのでした。

王は、動物を探すために、

大きな犬を何頭も連れていました。

そしてその犬たちが、お姫様がいる木の下まで、

走ってやって来ると、

木の上のお姫様にむかって、ワンワン吠えだしたのです。

その声を聞きつけて、

王やお供の者たちが、木の下に集まってきました。

そして王が、見上げると、

額に金の星のある、美しい女の子を見つけたのです。

王は、この女の子をみてうっとりしました。

そして



『私の妃になりませんか?』



とお訊ねになったのです。

お姫様は、声は出しませんでしたが

お顔を真っ赤にして、こくりと頷きました。

それを見た王は、自ら木に登り、

お姫様をおろされると、

乗って来た自分の馬に乗せて連れて帰ったのでした。



 婚礼はとても華やかに、歓びの内に行われたのです。

しかし花嫁であるお姫様は、

口もきかなければ、笑いもしないのです。

何年かは、二人は仲睦まじく暮らしましたが、

王の母親は、王にとって継母で、

この根暗な嫁に腹を立て、

さんざん若いお妃の悪口を、王に並べ立てるのです。



『あなたの連れてきた小娘は、

 いやしい身分の娘じゃございませんか?

 一言もしゃべらず、こっそりと、

 どんな悪だぐみをしてるか、知れたものじゃないですよ。

 いくら口がきけない人でもね、

 笑う事くらい、できるものなのですよ。

 それなのに、全く笑わないだなんて、

 あの小娘の心には、やましい事があるに違いないのです。』



 王は、初めは継母のいう事なんて、

これっぽっちも気にしませんでした。

しかし、毎日毎日、散々悪口を聞かされ、

やがて本当にその通りだと、

思いこむようになってしまったのです。

しまいには、ご自分で連れてきたお妃に、

死刑を求刑してしまったのでした。



 王は、中庭に、薪を高く積み上げさせました。

お妃は、この薪の中で火で焼かれることになったのです。

王は、城の窓辺に立って、

薪の上に連れて行かれるお妃を見つめました。

まだ心の奥で、お妃を愛している王は

それを見て涙を流しました。

しかし薪の中に突きたてられた太い柱に、

とうとう若いお妃は、縛り付けられてしまったのです。



 そして薪に、火がくべられたのです。



 その瞬間です。



 とうとうあの魔法使いのお婆さんと約束した、

7年目が終る瞬間が過ぎたのです。

すると空中に、沢山の鳥の羽音が聞こえてきました。

なんと12羽のカラスが飛んで来たのです。

そしてカラスたちが、地面に降りてきて、

足が土に触れると同時に、

そこには、薪の中の柱に縛られている

若いお妃の、12人の兄さんたちが立っていたのです。

12人の兄たちは、妹が火あぶりにされているのを見て、

いそいで火を掻き散らし、炎を消すと、

縛られていた妹を、助け出したのです。

自由になった妹を、12人の兄たちは、

代わる代わる抱きしめました。



 一方、若いお妃もやっと口が利けるようになり、

今まで、一言も口を利かないどころか、

笑う事さえもしなかった、その訳の一部始終を、

愛する夫の王に、打ち明けたのでした。



 それを聞いた王は、

愛するお妃に何も罪が無いばかりか、

兄たちを助けようと必死だったことを聞き、

心から喜びました。

そして王とお妃、そして12人の王子たちは、

みんな仲良くこの国で暮らしたのです。



 ところで・・・王の継母と言うと、

散々、お妃の悪口を言い、

しまいには、殺させようとしたことを罰せられ

自分が死刑になってしまったという事です。



~『12人の王子』 おしまいっ~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おわりっ。
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