『 ナ イ チ ン ゲ ー ル 』
前回までのお話し 「ナイチンゲール 1」 「ナイチンゲール 2」
「ナイチンゲール 3」 「ナイチンゲール 4」 「ナイチンゲール 5」
「ナイチンゲール 6」 「ナイチンゲール 7」 「ナイチンゲール 8」
ところがまだ皇帝は、亡くなってはいませんでした。
皇帝は体をこわばらせながら、青ざめた顔をして、
長いビロードのカーテンと、
重たい金の房の垂れ下がっている、
立派な部屋の中央で、ジッと寝ていたのです。
その御病床の皇帝の部屋には、分厚い絨毯が敷き詰められ、
足音が立たない工夫がされていました。
あたりはひっそりと静まり返っておりました。
そのずっと上の所に、窓が一つ空いていて、
そこからお月様の光が差し込んで、
皇帝と、作り物の鳥を照らしていました。
気の毒な皇帝は、もう殆ど息をすることが出来ません。
まるで何かが、胸の上に乗っているような気さえします。
そこで皇帝は、目を開けてみたのです。
すると胸の上には、死神が乗っかっていたのです。
死神は、皇帝の金の冠を被り、
片手には皇帝の金の剣を持ち、
もう一方の手には、皇帝の美しい旗を持っていました。
そして周囲のビロードの長いカーテンのひだの間からは、
怪しげな顔がいくつも覗いていました。
中には、もの凄く醜い顔もあったり、
とても和やかで、優しい顔も覗いているように見えました。
それらの全てが、皇帝が今までにやってきた、
悪い行いと、善い行いの全てだったのです。
今、死神が皇帝の胸の上に乗りましたから、
全ての顔は、皇帝をじっと見つめたのです。
『皇帝、これを覚えていますか?』
と、沢山の顔は、次々に囁きました。
『これは覚えてますか?』
こうして、怪しげなものたちが、
次々と色んな事をしゃべり出したので、
とうとう皇帝は、額から汗が流れ始め、
『そんなことは、わしは何も知らん!
誰か、音楽だ!大きな中国太鼓を叩け!
このものどもの言う事が、
何も聞こえんようにしてくれ!』
と、言いました。
しかし怪しげな顔達は、
なおも喋りつづけたのです。
死神は、まるで中国人そっくりに、
いちいち、顔達の言うことに頷いていました。
その度に、皇帝は、
『音楽だ!音楽を!』
と、叫びました。
『これ、可愛い金の鳥よ。
どうか歌っておくれ。
わしはお前に、金も宝石もやったではないか。
わしの手で、お前の首の周りに
金のスリッパもかけてやったではないか。
さあ、早く歌っておくれ。歌うのじゃ!』
それでも鳥はやっぱり、黙ったままでした。
螺子(ねじ)を巻いてくれる人が、誰もいないのです。
螺子を巻かなければ、この作り物の鳥は歌えないのです。
死神は相変わらず、大きな空っぽの目で、
皇帝をじっと見つめておりました。
あたりはひっそり静まりかえり、
とんでもないほど薄気味が悪くなっていました。
と、その時です!
窓のすぐそばから、
それはそれは美しい歌が聞こえてきました。
それは生きている、あの小さなナイチンゲールでした。
たった今、外の木の枝に飛んできて、
歌い始めた所だったのです。
ナイチンゲールは、皇帝が重い病気だと聞いて、
それでは歌を歌って、お慰めさせていただこうと、
飛んで来たのでした。
~今日は、このあたりで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
