『 雪 お ん な 』



前回までのお話し  「雪おんな 1」  「雪おんな 2」




 夜明けまでには、あらしはもう止んでいた。

日が出てから少しのちに、

渡し守(わたしもり)が小屋へもどってみると、

こごえ死んだ茂作のそばに、

巳之吉が気をうしなって倒れていた。

巳之吉は手早く介抱されて、まもなく正気にかえった。

が、そのおそろしい一夜の寒さが身にこたえて、

ながいあいだ、床についていた。

彼は、茂作老人が死んだのにもひどくおどろいたが、

白い女の幻のことについては、ひとことも言わなかった。

ふたたび、からだがよくなると、

巳之吉はすぐまた、もとの家業をはじめた。

――毎朝ひとりで森へゆき、

日暮れに薪(まき)の束をもって家にかえると、

母親が手伝って、それを売ってくれた。



 翌年の冬の、ある夕暮れのことであった。

巳之吉が家にかえる途中、

たまたま同じ道を歩いてゆく一人の娘に追いついた。

背の高い、ほっそりした、たいへん器量のよい娘で、

巳之吉が挨拶すると、

まるで小鳥の歌のように快い声で答えた。

それから、彼は娘とならんで歩き、

二人は話をしはじめた。

娘の名は「お雪」といい、つい先ごろ両親をなくしたので、

これから江戸へ出てゆき、

そこにいる貧しい親戚の人たちに、

奉公口でも探してもらうつもりだ、と話した。

巳之吉は、すぐこの見も知らぬ娘に、

ひどく心をひかれて、

見れば見るほど、ますます美しく見えてきた。

で、巳之吉は、もう約束した人があるか、と娘に尋ねた。

娘は笑いながら、そんなものはない、と答えた。

そして今度は、娘のほうから巳之吉にむかって、

もうお嫁さんをお持ちですか、

それとも言いかわした人がありますか、と聞きかえした。

そこで彼は、

養うのは寡婦(やもめ)の母親ひとりきりだけれど、

自分はまだ若いので、

べつに「お嫁」のことなど考えたことはない、と答えた。

……こんな打明け話をしたのち、

二人はながいあいだ、だまって歩いた。

しかし、諺(ことわざ)にも言うとおり、

「気があれば目も口ほどに物を言い」

で、二人は村に着くまでに、

たがいに心から好きになっていた。

それで、巳之吉は、

自分の家でしばらく休んでゆくようにと、お雪に言った。

お雪は、すこしはずかしそうに、ためらっていたが、

彼といっしょに行った。

すると、巳之吉の母親は、

よろこんでお雪をむかえ、

あたたかい食べ物の用意などした。

お雪の立居(たちい)ふるまいが、

なかなかりっぱなので、

たちまち巳之吉の母親の気に入ってしまい、

江戸へゆくのを延ばすように、説きつけられた。

そういうわけから、当然ながら、

お雪は、けっきょく、江戸へはぜんぜん行かずに、

そのまま「お嫁」として、

この家にとどまったのである。



~本日は、これにて・・・~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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