『 果 心 居 士 の は な し 』
前回までのお話し 「果心居士のはなし 1」
「果心居士のはなし 2」 「果心居士のはなし 3」 「果心居士のはなし 4」
果心居士は、牢屋のなかで、
荒川の身におこったことを聞いて笑った。
が、しばらくすると、牢番にむかってこう言った。
『ねえ、あの荒川という奴は、ほんとに、
ならず者みたいな振舞をしたんで、
あいつの悪い心根をなおしてやろうと思って、
わしが、故意にこんな罰をうけるようにしたのだよ。
しかし、荒川は、事実はなにも知らなかったに違いない。
それで、わしから、
いっさいのことをよくわかるようにお話しすると、
奉行に伝えてくれ。』
そこで、果心居士は、ふたたび奉行のまえに連れだされ、
次のように申したてた。
『ほんとにすぐれた絵には、
魂がこもっているに違いありません。
またそのような絵には、それ自身の意志がありますので、
自分に生命をあたえてくれた人から、
いやそれどころか、その正しい持ち主からさえ、
引き離されるのをいやがることがあります。
ほんとに優れた絵には、
魂があることを証明するような話が、たくさんあります。
むかし、法眼元信(ほうげんもとのぶ)が
襖(ふすま)に描いた雀が、幾羽か飛んでいって、
その絵のあとが白紙になっていた話は、
よくしられております。
また、ある掛物にかいてあった馬が、
夜分にはいつも、草を食べに出かけたこも、
よく知られております。
さて、このたびの場合も、真相はこうだと思います。
つまり、信長公は、
けっしてわたしの掛物の正しい持ち主になれなかったんで、
絵が公(こう)の面前で広げられた時、
ひとりでに消えうせたものだと信じます。
しかし、わたしが最初にお願いした値段
――すなわち、黄金百両をお出しになるようでしたら、
そのときには、絵は自分から進んで、
げんざい白紙になっているところへ、
ふたたび現れるだろうと思います。
とにかく、試しにひとつ、
やってごらんになっては、いかがです。
あぶないことなぞ、少しもございません。
――と申しますのは、
もし絵がふたたび現れないようでしたら、
お金はすぐにお返しいたしますから。』
このかわった申し立てを聞くと、
信長は百両支払うように命じ、
その結果を見ようと、したしく臨席した。
そこで、公の面前で、掛物が広げられた。
~今日は、このあたりで・・・~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
