『 果 心 居 士 の は な し 』



前回までのお話し  「果心居士のはなし 1」
「果心居士のはなし 2」  「果心居士のはなし 3」





『あんたこそ裏切り者だ。

 あんたは、その絵を献上して信長公へ

 諂(へつら)おうとしたのだ。

 そして、それを盗むために、

 わしを殺そうとしたのだ。

 まったくのところ、

 もしこの世の中に罪というものがあるとしたら、

 これこそ、まさにその罪なんだ。

 さいわいにも、わしをうまく殺せなかったが、

 もし望みどおりにうまく殺せていたら、

 そんなひどい仕打ちに、

 なんと申し開きができたろう?

 とにかく、あんたは絵を盗んだんだ。

 わしがいま所持している絵は、その写しにすぎない。

 しかも、あんたは絵を盗んだ後で、

 それを信長公に献上するのが嫌になって、

 自分の物にしておこうと、計略を企んだのだ。

 それで、白紙の掛物を信長公にさしあげ、

 その秘密の行いや企みをおし隠さんがため、

 このわしが、本物の掛物を白紙の物とすりかえて、

 あんたを欺いたように見せかけたんだ。

 いま、本物の絵がどこにあるか、

 わしは知らない。

 おおかた、あんたは知っているだろう。』



 この言葉を聞くと、荒川はひどく怒り出して、

果心居士に飛びかかって行った。

そして、もし見張り人に遮られなかったら、

彼を殴りつけるところだった。

ところで、荒川が、

このように突然ひどく怒り出したため、

かえって奉行に、荒川はぜんぜん罪が無いわけでは無かろう。

と、疑念を起こさせた。

さしあたり果心居士を、牢に入れて置くように命じてから、

奉行は、荒川を厳重に尋問し始めた。

ところが、荒川は生来訥弁(とつべん)であるうえに、

このときは、ひどく興奮していたので、

ろくに物が言えず、どもったり、

つじつまの合わぬことを喋ったりして、

どう見ても、罪を犯したと思われるような素振りを見せた。

そこで奉行は、白状するまで、

荒川を鞭(むち)で打つように命じた。

けれども、荒川は、

ほんとうのことを言っているような様子さえもできず、

竹で打たれて、とうとう正気をうしない、

死人のようにぶっ倒れた。



~今日は、このあたりで・・・~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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