『 雪 お ん な 』



前回までのお話し  「雪おんな 1」




 顔に雪がさかんに降りかかるので、

巳之吉は目をさました。

小屋の戸はむりにこじ開けられて、

小屋のなかに一人の女

――すっかり白い装いをした女がいるのが、雪明りで見えた。

女は茂作のうえに身をかがめて、息を吹っかけていた。

――その息は、きらきらする白い煙のようであった。

ほとんどそれと同時に、女は巳之吉のほうをふりむいて、

彼のうえに身をかがめた。

巳之吉は声を立てようとしたが、少しも声が出なかった。

白い女は、彼のうえに、だんだんかがみこんできて、

とうとう、もうすこしで、

女の顔が巳之吉に触れそうになった。

見ると、その女は、目はこわかったが、

たいへん美人だった。

女は、しばらく巳之吉をじっと見つづけていたが、

やがて、にっこりと笑って、ささやいた。

『おまえも、

 あの人と同じような目にあわせてやろうと思ったんだが、

 どうもすこし、かわいそうになってきてね。

 ――だって、まだとても若いんだから。

 ……おまえはきれいな子だね、巳之吉。

 それで、今のところ、

 おまえを傷めるようなことはしないよ。

 だけど、おまえがもしだれかに、

 ――たといおまえの母親にでも

 ――今夜見たことを話そうものなら、

 ちゃんとわたしにわかるのだから、

 そのときは、おまえを殺してしまうからね。

 ……わたしの言ったことを、よく覚えておいで。』



 こう言うと、女はくるりと向こうをむいて、

戸口から出ていった。

すると巳之吉は、身動きができるようになった。

それで、はね起きてそとを見た。

しかし、女はもうどこにもいなかった。

そして、雪がはげしく小屋のなかに吹きこんでいた。

巳之吉は戸を締め、

それに棒切れを幾本もしっかりと立てかけて、

開かないようにした。

また、ただ夢をみていて、

入口の雪明りがちらつくのを、

白い女の姿と思い違いしたのかもしれない、とも思った。

しかし、たしかにそうとも、言いきれなかった。

巳之吉は、茂作に声をかけてみたが、

老人が返事をしないので、ぎょっとした。

暗がりに手をさしのばして、茂作の顔にさわってみると、

まるで氷のように冷たかった。

茂作は硬くなって、死んでいた。……



~今日は、ここまでで・・・~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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