『 安 芸 之 助 の 夢 』



前回までのお話し  「安芸之助の夢 1」




 こういう言葉を聞くと、安芸之助は、

なにか適当な返答をしたいと思ったが、

わが身から溶け去るように思われて、

ただ家来の言うなりになるよりほかはなかった。

安芸之助は車に乗り込んだ。

家来も彼のそばに座をしめて、合図をした。

曳き手(ひきて)たちは絹の綱をとって、

大きな乗物を南のほうへむけた。

――そして、旅は始まったのである。



 ほんのしばらくすると、安芸之助が驚いたことには、

車はこれまで見たこともない

支那風の大きな楼門の前にとまった。

ここで、家来は車から降りて、

『お着きを知らせに行ってまいります。』

と言って、姿を消した。

しばらく待っていると、紫色の絹の服をつけ、

高貴な位をしめす形の、高い冠をかぶった、

気高い様子の人が二人、門から現れた。

そして、うやうやしく礼をしてから、

安芸之助を乗物から助けおろし、

先に立って、大きな楼門を通り抜け、ひろい庭を横ぎって、

正面が東西幾マイルにも渡ると思われる御殿の入口へ出た。

それから、安芸之助は、

おどろくほど大きくて華麗な接待の間へ通された。

案内の者は、彼を上座に導き、

かしこまって離れたところに座をしめた。

すると、礼服をつけた侍女たちが、茶菓を運んできた。

安芸之助がもてなしの茶菓をすませると、

紫色の服を着た二人の侍者が、

彼の前にうやうやしく頭を下げてから、

宮中の礼儀にしたがって、かわるがわる口を開いて、

次のように言った。



『さて、おそれながら申しあげますが、

 ……ここへお招き申しました訳は、

 ……わが君なる国王さまには、あなたさまに、

 お婿君になっていただきたいと、望んでいられます。

 ……そして、今日これから、

 内親王(ないしんのう)とご結婚あそばすようにとの、

 御上意でございます。

 すぐ謁見の間へご案内申し上げます。

 ……陛下はもうあちらで、お待ちかねになっていられます。

 ……が、まずお定めの御式服を

 お着せいたせねばなりますまい。』



 こう言って、侍者は二人とも立ちあがって、

金蒔絵(きんまきえ)の

大きな櫃(ひつ)のおいてある床の間へすすんだ。



~今日は、このあたりで・・・~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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