『 安 芸 之 助 の 夢 』
大和国(やまとのくに)の
十市(とおいち)郡と呼ばれるところに、
むかし宮田安芸之助(みやたあきのすけ)という
郷士(ごうし)が住んでいた。
……(ここで、お話ししておかねばならぬのは、
日本の封建時代には、
イギリスで言う「ヨウマン」階級に相当する、
農をかねた武士「自領所有者」の特権階級があって、
それを郷士と呼んでいたのである)
安芸之助のうちの庭には、大きな古い杉の木があって、
暑苦しい日など、彼はよくその下で、休んだものであった。
ある暑い日の午後のこと、
安芸之助が郷士仲間の二人の朋輩(ほうばい)と、
この木の下に坐って、
談笑しながら酒を酌み交わしていると、
急にひどく眠気がさしてきた。
どうにも眠くて仕方がないので、
その場でうたた寝させてくれと言った。
それから、木の根もとにごろりと横になると、
こんな夢を見た。
なんでも、自分のうちの庭先に横になっていると、
そこへどこかのえらい大名の行列のような一行が、
近くの丘をおりてくるので、
それを見ようと、起き上がった様に思った。
見れば、なかなか立派な行列で、
これまで見たこともないような、堂々としたものあった。
それが彼の住居のほうへ近づいてくるのである。
行列の先頭には、花やかないでたちをした若侍が、
幾人もいるのが目についたが、
彼らは、あざやかあな空色の絹をたらした
大きな漆塗りの御所車を引いていた。
家のすぐ近くへ来ると、行列は止まった。
そして、一人のりっぱな服装をした、
――見るからに身分の高い人が、行列のなかから現れて、
安芸之助に近づき、丁寧にお辞儀をして、こう言った。
『おそれながら、御前へまかり出でましたのは、
常世の国(とこよのくに)の王の家臣でございます。
わが君なる国王さまには、御名代(ごみょうだい)として、
わたくしから御挨拶申し上げ、
何事もあなたさまの
思召(おぼしめ)しのままにせよとの、
仰せでございます。
また、御殿へお出ましを願いたいとのことでございます。
どうか、お迎えにつかわされたこの御車(ぎょしゃ)に、
すぐお召しになっていただきとう存じます。』
~今日は、ここまで~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
