『 食 人 鬼 』



前回のお話し  「食人鬼 1」  




 それを聞いた夢窓は、答えて言った。


『御親切なお志と、手厚いもてなし、

 まことにかたじけのうぞんじます。

 しかし、わたしが参りましたおりに、

 御尊父の逝去(せいきょ)のことを

 知らしてくださらなかったのは、残念でした。

 と申しますのは、すこし疲れてはいましたが、

 出家としてのお勤めをしかねるほどには、

 くたびれてはおりませんでした。

 お話を伺っておきましたら、皆さん方のお出かけ前に、

 お経をおあげ申すところでしたのに。

 だが、そうはゆきませんでしたから、

 みなさんの出られたあとでお勤めして、

 朝まで御遺骸のそばに、残っておりましょう。

 ひとりでここにいるのはあぶない、

 と言われるわけがわかりませんが、

 わたしは幽霊も魔物も恐れはいたしません。

 それゆえ、どうかわたしのことは、

 御心配なさらんように。』



 若者は、この自信のある言葉を聞いて、

いかにも嬉しそうに、しかるべき言葉でお礼を述べた。

それから、家族のほかの者たちや、

隣りの部屋に集まっていた人たちも、

坊さんの親切な約束の言葉を伝え聞いて、お礼を述べに来た。

そのあとで、この家のあるじはこう言った。



『では、御出家さま、あなたさまだけ、

 おひとり残してまいりますのは、

 まことに心残りではございますが、

 もうお暇申さねばなりません。

 村の掟(おきて)によりまして、真夜中過ぎには、

 一人もここに居残ることはできません。

 どうか、御出家さま、

 わたしどもがお側に付添できませんあいだ、

 くれぐれも御身にお気をつけくださいませ。

 そして、もし留守のあいだに、

 なにか変ったことを

 見聞きなさるようなことがございましたら、

 朝わたしどもが帰りましたときに、

 お聞かせくださいませ。』



 それから、みんな家から出てゆき、夢窓だけは、

遺骸のおいてある部屋に行った。

型通りの供え物が遺骸のまえにおかれ、

小さな灯明が燃えていた。

夢窓は、お経を読んで葬い(とむらい)の式をすませ、

そのあとで瞑想に入った。



 こうして瞑想しながら、静まりかえったなかに、

しばらくのあいだ、じっと坐っていた。

人気(ひとけ)のない村には、物音ひとつしなかった。

ところが、夜の静けさがこのうえなく深まったとき、

もうろうとした大きな姿のものが、

音もなくはいってきた。



~今日は、ここまで。~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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