『 お や ゆ び 姫 』



前回までのお話し  「おやゆび姫 1」  「おやゆび姫 2」  「おやゆび姫 3」
「おやゆび姫 4」  「おやゆび姫 5」  「おやゆび姫 6」  「おやゆび姫 7」





 ツバメは、おやゆび姫に色んな話しをしました。



――茨の藪で、片方の羽根を破いてしまったから、

他のツバメのように、早く飛ぶことが出来なくなったこと。

それに他のツバメたちは、

みんな遠い遠い暖かな国へ行ってしまったこと。

そして彼は、飛んでいる時に、遅れてしまい、

仲間にとうとう追いつけなくなった所までは、

覚えているのですが、

その後の事は、全く覚えてなくて、

どうしてここに居るのかがわからないと話をしたのです。



 冬の間中、ツバメはそこに居ました。

そしておやゆび姫は、優しくツバメを介抱したのです。

姫は、すっかりこのツバメの事を好きになっていました。

しかしモグラにも、野ネズミのお婆さんにも、

このツバメの事は、何も話をしませんでした。

それと言うのも、モグラも野ネズミも、

この可哀想なツバメの事を嫌いだったからです。



 やがて春が来ました。

お日様が地の下まで温めるようになると、

ツバメは直ぐに、おやゆび姫に別れを告げました。

おやゆび姫は、前にモグラが開けた

あの天井の穴を、ツバメのために開けてやりました。

お日様は明るく、2人を照らしました。

するとツバメは、



『姫、私と一緒に行きませんか?

 私の背中に乗れば、

 向こうの緑の森まで、連れて行ってあげられますよ。』



と、言いました。

しかし、おやゆび姫は、自分が出て行ったら、

年をとった野ネズミのお婆さんが寂しい思いをする、

そう思うと、一緒に行く事を躊躇ったのです。



『いいえ、私は、一緒には行けません。』



おやゆび姫がそう言うと、



『わかりました。

 さようなら、親切で可愛いお嬢さん。』



ツバメはそう言い残し、お日様の光の中へ

サッと、飛び立って行ってしまったのです。

それを見送った、おやゆび姫の目には、

涙があふれていました。

何しろ、このツバメの事を心から大好きだったのですから。



『キューピット、キューピット』



ツバメは歌いならが、緑の森の方へ飛んでいきました。



 おやゆび姫は、たいそう悲しみました。

暖かいお日様の光の中へ出ることは、

彼女にはどうしても許されないことなのです。

畑にまかれた麦は、野ネズミの家を覆って、

空高く伸びました。

親指ほどしかない、小さな女の子にとって、

それは深い深い森、その物なのです。



 そんな おやゆび姫の悲しみを知らない野ネズミは、



『さあ夏の間に、お嫁入りの着物を縫うのですよ。』



と、言いました。

あの黒い立派なビロードの毛皮のモグラが、

いよいよ おやゆび姫をお嫁に貰いたいと、

言って来たのです。



『姫、毛の着物も、それから木綿のも両方必要ですよ。』



 おやゆび姫は、悲しみの中で、

糸車をからからとまわし、

糸を紡がなければなりませんでした。

野ネズミは、蜘蛛を4匹雇いました。

そして夜も昼も、機(はた)を織らせました。

 そんな中、モグラは毎晩訪ねてきて、

食事を共に取り、お喋りをしに来たのです。



『やがて夏が過ぎ、

 太陽がこんなに熱く照らないようになったら、

 ほら今は、こんなにどこもかしこも熱くて、

 火傷をしてしまいそうだけど、

 夏が過ぎたら、おやゆび姫と婚礼をあげるんだ。』



 モグラはそう笑って楽しそうに話をするのでした。



 でもおやゆび姫は、それを聞いても、

ちっとも嬉しくはありませんでした。



~今日は、ここまで。 続きはまた明日。~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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