『 お や ゆ び 姫 』
前回のお話し 「おやゆび姫 1」
そんなある晩のことです。
おやゆび姫が、可愛いクルミのベッドで寝ていると、
醜いヒキガエルが一匹、
開いていた窓からピョコンと飛び込んできたのです。
ジメッとした、とても見にくい大きなヒキガエルは、
赤いバラの花びらの中で、眠っているおやゆび姫を見ると、
『可愛い息子の嫁が見つかったわ。
これは綺麗な嫁だこと。
家に連れて帰るとしよう。』
そうヒキガエルは言うと、
おやゆび姫をクルミのベッドごと持ち上げ、
窓から庭に飛び降りたのでした。
カエルはクルミのベッドを持ち上げたまま、
ピョンピョン飛んで行きました。
すると着いた場所は、大きな川でした。
その川の岸はどろどろとした、沼のようでした。
ここがヒキガエルの住家です。
ヒキガエルは、ゲロゲロと鳴き、
家で留守番をしていた息子を呼びました。
沼地から出てきた息子のヒキガエルも、
母親のヒキガエルそっくり、とても醜い姿です。
息子は母親が持って帰った
クルミのベッドの中を覗きこみました。
そしてその中で眠っている可愛い女の子を見ると、
『コアックス、コアックス、ブレッケレケケックス!』
と、わめきたてました。
醜い息子は、これだけしか物が言えないのです。
『息子よ、バカだね。
そんなに大声を出すんじゃないよ!
娘が目を覚ましちまうじゃないか!』
母ガエルは、息子を叱りました。
『この子はね、白鳥の羽毛の様にふんわりと軽いんだ。
目を覚ましちまったら、ふわりと飛んで、
どっかに逃げちまうかもしれないだろ。
そうだ、逃げ出さないように、
川に浮かんでいる、水蓮の葉の上に乗せておこう。
こんなちっぽけな娘なら、
あれでも島みたいなものだろうしね。
あそこからなら、逃げられやしないさ。
その間に、わたしらは、
泥の中に、お前ら新婚夫婦が住む、
立派な部屋を作るとしようかねぇ。』
母親のヒキガエルはそういうと、
クルミのベッドを持ち上げたまま川を泳ぎ始めました。
川の真ん中には、沢山の水蓮が生えています。
そしてその中から、一番大きな葉を見つけると、
クルミのベッドをその葉の真ん中に、そっと置きました。
そしてヒキガエルは、そのまま泳いで、
川の岸のドロ沼の中へと消えて行ったのです。
おやゆび姫は、何も知らずすやすやと眠ったまま、
水面にたゆたう水蓮の葉の上に置き去りにされたのでした。
翌朝、小さなおやゆび姫は目を覚ましました。
辺りを見渡すと、そこは見たことが無い場所です。
大きな葉っぱの島の上に、一人でいるのです。
おやゆび姫は、怖さと淋しさで、泣きだしました。
どっちを向いても、葉っぱの島の向こうは水ばかりです。
遠くに見える岸に辿り着こうにも、
小さなおやゆび姫には、とうてい叶わぬことでした。
母親のヒキガエルは、ドロ沼の中で、
部屋を葦や、綺麗な花々で飾り付けました。
息子の嫁の為、居心地を良くしてやろうというつもりです。
それが済むと、母親は息子のヒキガエルと一緒に、
おやゆび姫のいる、水蓮の葉へと泳いできました。
母親は、綺麗なクルミのベッドを
ドロ沼の中に作った部屋に入れようと思ったのです。
すると葉の上で、泣いている女の子を見つけ、
水の中に深々と頭を下げ、女の子にお辞儀をしました。
そして、
『これが、あんたの婿になる男で、私の息子さ。
2人の新婚の部屋も泥の中に出来上がったよ。』
すると息子のヒキガエルは、
『コアックス、コアックス、ブレッケレケケックス!』
と、やはり今回もこう言ったのです。
母ガエルと息子のヒキガエルは、
おやゆび姫にあいさつを済ませると、
綺麗なクルミのベッドを担いで、泳いで行ってしまいました。
おやゆび姫は、ひとりぼっちで葉っぱの上で泣いていました。
あんな醜く汚いヒキガエルの家に行って、
あんな醜い息子を夫にするのは、とても嫌だったのです。
水の中を泳いでいた小さい魚たちは、
このヒキガエルの親子の事をよく知っていました。
そして、母親と息子が、おやゆび姫に話をしていたことも、
じっと聞いていました。
魚たちは、どんな女の子がお嫁に来たのかと、
みんな水の上に顔を出して、覗きに来ました。
するとそこにはとても愛らしい小さな女の子が
1人で、悲しそうに泣いていたものですから、
魚たちは、この女の子をたいそう気の毒に思いました。
~今日は、ここまで。 続きはまた明日に。~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
