『 興 義 和 尚 の は な し 』



前回のお話し  「興義和尚のはなし 1」  




 ある日のこと、興義は病気になった。

それから一週間ばかりわずらったのち、

口をきくことも動くことも、ぜんぜんできなくなったので、

もう死んだように見えた。

しかし、葬式がすんだあと、弟子たちは彼のからだに、

まだいくぶんぬくもりのあるのに気がついたので、

しばらく埋葬を見合わせて、

この一見死んだように見える和尚のからだのそばで、

見張りをすることにした。

すると、おなじ日の午後に、興義はとつぜん生き返って、

付添っている者たちにこう尋ねた。

『わしが気をうしなってから、どのくらいになるかね?』

『三日以上になります。』

と、一人の小僧が答えた。

『ほんとに亡くなられたと思いました。

 それで、けさ、お葬(とむら)いのために、

 お知り合いのかたがたや檀家の人たちが、

 お寺に集まられました。

 式をすませましたが、あとで、

 おからだがすっかり冷たくなっておりませんので、

 埋葬は見合わせました。

 そしていま、そう取り計らったのを、

 たいそう喜んでおります。』

 興義は、わが意をえたというように、

うなずいてから、こう言った。

『だれでもよいから、

 すぐ平の助の家に行ってもらいたい。

 助の家では、いま若い者たちが酒盛りをやっている。

 (魚を食べたり酒を飲んだりしている)

 そうして、若い者たちにこう言ってくれ。

 「うちの和尚が、生き返りました。

  どうか酒盛りをやめて、すぐ来ていただきたい。

  めずらしいはなしがありますから。」

 とね。……それと同時に』

と、興義は言葉をつづけた。

『助と兄弟たちとが何をしているか、見届けてくれ。

 ――わしの言うとおり、酒盛りをしているかどうかをね?』



 そこで、一人の小僧が、すぐ平の助の家に行った。

すると、興義の言ったとおり、助と弟の十郎とが、

家の子の掃守(かもり)といっしょに、

酒盛りをしているので、おどろいた。

けれども、使いの用向きを聞くと、

三人はすぐ酒肴(しゅこう)をそのままにして、寺へいそいだ。

興義は、すでに寝床に移されて横になっていたが、

にこにこしながら三人を迎えた。

そして、二こと三こと挨拶を取りかわしたのち、

和尚は助にこう言った。

『さて、これからわしが二、三お尋ねするから、

 どうか返答していただきたい。

 まず第一に、あんたは今日、猟師の文四から、

 魚を買いませんでしたかな?』

『ええ、買いましたよ。』

と助は答えた。

『が、どうしてご存じなんです?』



~続きはまた明日。~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
ペタしてね