『 ろ く ろ 首 』
前回迄のお話し 「ろくろ首 1」 「ろくろ首 2」 「ろくろ首 3」 「ろくろ首 4」
「ろくろ首 5」 「ろくろ首 6」 「ろくろ首 7」 「ろくろ首 8」
袖に首をぶらさげたまま、回竜が家に引き返してみると、
ほかの四つのろくろ首は、傷ついて血の流れている首を、
もとどおり胴にくっつけて、ひとかたまりに、うずくまっていた。
しかし、裏口に回竜の姿があらわれたのを見ると、
『坊主だ、坊主だ。』
と叫んで、みんなほかの戸口から、森のなかへ逃げていった。
東の空が白んで、夜が明けようとしていた。
回竜は、化け物の力は、
闇のあいだにかぎられていることを知っていた。
袖に食い下がっている首を見ると、その顔は、
血と泡と泥とで、すっかり汚れていた。
『いやはや、なんという土産だろう。
――化け物の首なんて!』
回竜は、ひとりこう考えて、たからかに笑った。
それから、わずかばかりの持ち物をとりまとめて、
旅をつづけるため、ゆうゆうと山をくだった。
回竜は、ひたすら旅をつづけて、
とうとう信濃の諏訪まで来た。
そして、肘のところに生首をぶらさげたまま、
どっしりとした足どりで闊歩(かっぽ)しながら、
諏訪の本通りに、はいって行った。
これを見て、女たちは気をうしない、
子供たちは悲鳴をあげて逃げだした。
そして、たいへんな人だかりがして、
騒がしくなってきたので、
とうとう捕手(とりて)
(当時は警察官のことをそう呼んでいた)が回竜を捕えて、
牢屋へ引き立てて行った。
というのは、その首は殺された男の首であって、
殺された瞬間に下手人である回竜の袖に噛みついたものだと、
捕手の者たちは、考えたからである。
ところが、回竜のほうは、尋問されても、
ただにやにやするだけで、何も言わなかった。
そこで、一夜を牢屋であかしたのち、
土地の奉行のまえに引きだされた。
そして、出家の身でありながら、
なにゆえ人の生首など袖にくっつけているのか、
また、なんのわけがあって、人々の面前に、
自分の罪悪を臆面もなく見せびらかすようなことをするのか、
申したてよと命ぜられた。
~本日は、ここまで。~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
