『 青 柳 の は な し 』
前回迄のお話し 「青柳のはなし 1」 「青柳のはなし 2」
友忠は、自分が感じいって見つめるのに、
娘が顔を赤らめるのに気がついたが、
目をはなすことはできなかった。
そして、自分のまえの酒にも肴 (さかな) にも、
手をふれないでいた。
で、母親はこう言った。
「お武家さま、どうぞ、すこし召しあがってくださいませ。
――田舎 (いなか) 料理で、
とてもお口に合いますまいけれど、
肌をさすような寒い風で、
さぞかしお冷えでございましょうから」
そこで、老人たちをよろこばせようと、
友忠はつとめて飲んだりくったりした。
が、顔を赤らめた娘の美しさに、
ますます心をひかれていった。
娘と言葉をかわしてみると、
言葉も、その容貌 (ようぼう) におとらず美しかった。
山家 (やまが) 育ちかは知らぬが、
しかし、それにしても、娘の両親は、
もとはいずれ由緒のある身分の人であったに相違ない。
娘の物言いやふるまいは、
高家 (こうけ) の姫君と思えたからである。
ふと友忠は、心のなかの歓びにかられて、
一首の和歌で、娘に話しかけた。
が、これはまた、問いかけでもあった。
尋ねつる
花かとてこそ
日を暮らせ
明けぬになどか
あかねさすらん
すると娘は、すこしもためらわず、
次のような返し歌をよんだ。
出づる日の
ほのめく色を
わが袖(そで)に
つつまばあすも
君やとまらん
そこで友忠は、自分の景慕の情を、
娘が受けいれてくれたことを知った。
そして、この歌が伝えてくれた愛のたしかな証拠を
ひどく喜んだが、ほとんどそれに劣らず、
歌にたくして思いを述べた彼女の技量にも、
おどろいたのであった。
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
