『 青 柳 の は な し 』
前回のお話し 「青柳のはなし 1」
友忠は馬からおりた。
そして、裏の納屋 (なや) に馬をつれて行ってから、
家のなかにはいった。
見ると、ひとりの老人と若い娘とが、
竹切れを焚きながら、暖まっていた。
二人はうやうやしく、彼を炉のそばへ招じた。
老人夫婦は、旅人のために酒をあたため、
食事の用意をしはじめた。
そして、旅のことなど、恐縮しながら尋ねた。
そのあいだに、娘は襖 (ふすま) のかげに姿を消した。
身なりはずいぶん見すぼらしく、
長い髪の毛は結 (ゆ) わずに乱れていたけれど、
娘がすばらしく美しいのに、友忠はおどろいた。
そして、こんなに美しい娘が、こんなみすぼらしい、
淋しいところに住んでいるのを、ふしんに思った。
老人は、友忠にむかって、こう言った。
「お武家さま、隣村までは遠うございますし、
雪もひどく降っております。
風は肌をさすようで、道もたいそう悪うございます。
それゆえ、今晩これからまた、お出かけなされるのは、
お危うございましょう。
このようなあばら屋で、
お泊りなされるような所ではございませず、
それに何のおもてなしもできませぬが、
今晩は、このむさくるしい家に、
おとまりなされたほうが、よろしゅうございましょう。
……お馬は、わたくしどもが、
ちゃんとお世話いたしますから」
友忠は、この謙遜 (けんそん) な申し出をうけいれた。
心のなかで、こうして、
さらにもっとこの娘を見られる機会が与えられたのを、
うれしく思った。
やがて、粗末ながらも、たくさんな御馳走 (ごちそう) が、
彼のまえに並べられた。
そして娘は、襖 (ふすま) のかげから出てきて、
お酌 (しゃく) をした。
彼女は、粗末ではあるが、
小ざっぱりとした手織の衣装 (いしょう) に、
着かえていた。
そして、結わずに垂らした長い髪にも、
きれいに櫛をいれて、滑らかになっていた。
彼女が、お酒を注ごうと、うつむいたとき、
友忠は、この娘がこれまで見たどの女にも、
くらべものにならぬほど美しいのに気がついて、
びっくりした。
それにまた、その立居ふるまいも、
おどろくほど淑 (しと) やかだった。
しかし老人たちは、娘のために言訳をしはじめた。
「お武家さま、うちの娘の青柳 (あおやぎ) は、
この山の中で、ほとんどひとりで育ちましたもので、
作法などまるで存じません。
なにぶんにも愚かで、わけのわかりませぬところを、
どうぞお許しくださいませ」
友忠は、それを遮って、このような、
かわいらしい娘御 (むすめご) に
お給仕 (きゅうじ) されるのは、
わが身の仕合せと思うと言った。
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。
