『 鏡 の 精 』



前回迄のお話し  「鏡の精 1」  「鏡の精 2」




垣をしてから七日ほど経ったある日、

風と稲妻と雷鳴を伴い、

長いひでりに終わりを告げる激しい豪雨が訪れた。

その雷のすさまじさたるや、とどろき渡るたびに、

京の街全体がまるで地震に見舞われたように

ふるえたほどであった。

豪雨と稲妻と雷鳴は三日三晩つづいた。

鴨川は未曽有の水かさに達し、橋をいくつも押し流した。



嵐がつづいている三日目の夜中のこと、

丑の刻になって、宮司の家の戸をたたく音がし、

なかへ入れてほしいと頼む女の声が聞こえた。

しかし井戸で起った例のでき事にこりていた松村は、

その声に応じてはならぬ、

としもべたちをおしとどめた。



松村は自ら戸口まで行って質(ただ)した。

「何者じゃ。」



すると外からは、やさしい声が答えた。

「ごめんくださいませ。

 私です、弥生でございます。

 松村様に申し上げたいことがございます。

 さし迫った仔細(しさい)がございます。

 どうぞここをお開けくださいませ。」



 松村はぬかりなく用心しながら、戸を半分ほど開けた。

すると先日、井戸の中から微笑みかけた、

あの美しい女の顔が見えた。

しかし今その顔にほほえみはなく、うれいに沈んでいた。



「うちの敷居は断じてまたがせんぞ。」



宮司は語気荒く言った。



「おまえは人間ではない。井戸に住む魔性だ。

 なぜおまえはあのように人をたぶらかし、

 命を落させるあやかしを行うのか。」



~ 今日は、ここまで。 続きはまた明日。 ~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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