私の実家は歯医者さんです。子どもの時はとても嫌でした。なぜかというと、知っている人がいっぱいいたからです。みんながみんな顔見知りだったのです。そして同級生も、後輩もみんな私の実家にやってきたのです。近所に他の歯医者さんはありません。だからみんな私の家にやってくるのです。でもそれが嫌でした。好きな子も嫌いな子も、みんなやって来るのです。会いたくない子にだって会ってしまうのです。父は歯科医師で母が歯科衛生士をしていました。嫌いな子にも分け隔てなく治療をするのです。私ぞいじめていた子にだってです。それがとても嫌でした。だから私は絶対に歯科医師にも歯科衛生士にもならないと決めていたのです。それなのに気がついたら私は歯科衛生士になっていました。そして実家で働いていたのです。まさか父と母のもとで働くなんて思いもしませんでした。最もしたくない事を、今しているのです。ありえません。でも私は好きになってきました。この仕事が好きになってきたのです。