蜷川さん | 川岡大次郎オフィシャルブログ「だいじろーの何か?」Powered by アメブロ

蜷川さん



訃報を聞いてから数日。

まだ大きく穴が空いた気分です。

お別れしに行っても、

やっぱり、まだ穴が空いてます。


常連の蜷川組の方々に比べたら、
僕は一度しか経験してません。
ですがその一度がとてつもなく大きな経験でした。

忘れもしません。

小栗旬くんの誘いで舞台「カリギュラ」の稽古場見学へ行かせてもらった際、
自身のプロフィールを蜷川さんに手渡しすると、

「お前、4月空いてるか?」

その瞬間に、仕事を決めて下った事。


忘れもしません。

駆け込みながらの登場のシーンで、徹底的に罵倒された事。

「バカヤロー!ダメだ!外から本当に走って来い!」

と稽古場外の駐車場から本気で走らされた事。



「わが魂は輝く水なり」
演出・蜷川幸雄 作・清水邦夫
Bunkamuraシアターコクーン 2008年5月4日~27日



忘れはしません。

蜷川さんと付き合いの長い松尾敏伸くんと一緒に飲んでいる場所に、渋谷の安居酒屋に、
あの蜷川幸雄が来てくれた事。

「役者と一緒に飲みに行かないんだ。」

と言いながら、本当に来てくれた事。

「青年から、次の年代に進むのが俳優は難しいんだ。だから舞台でもがけ。失敗しても大した事ないんだ。」

その愛情の深さに感動しました。



2年前、埼玉の稽古場に会いに行った際、
車いすに乗られていた蜷川さん。
近況を報告した僕に、

「頑張れ。頑張るしかないぞ。」


その姿、忘れません。






初めて舞台に立ったのが100人規模の小劇場で、
その次の舞台が蜷川さんとのコクーンだったので、
短い期間に凄まじい経験と勉強をさせて頂きました。

今でも自分の中の舞台の基準は
蜷川さんから伝えて頂いた事が基準です。

あの緊張感のすごい稽古場。

身体の芯から出てくる、正しい罵声とダメ出し。

世の中に対する怒りと
爆発しそうなエネルギーの塊。

トップランナーであり続ける姿。

そして、役者に対する深い愛情。


僕の役者人生の中で、蜷川さんに出会えた事は財産です。

この縁を作ってくれた小栗くん、松尾くん、ありがとう。

そして蜷川さん、
もう一度、ご一緒しかたった…。

悔しいです。


今はただただ、感謝の気持ちでいっぱいです。



川岡大次郎