32年前の韓国は軍事政権と闘っていた | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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埼玉映画文化協会の上映会があり「1987、ある闘いの真実」という、昨年封切られた韓国映画を観ました。先日は「新聞記者」という映画を観ましたが、この映画は韓国の軍事独裁政権を舞台にした19876月の民主化闘争をもとにつくられたフィクションです。

 

ソウル大学の一人の学生が警察の取り調べ中の拷問で死亡したという新聞社のスクープから始まります。えっ!という感じを持ちます。考えてみると1987年といえば、今からまだ32年前の出来事です。まして警察による拷問といえば日本では戦争中の治安維持法下での話ですから、更に40年余り遡る1940年代後半の話です。

 

学生たち若者が民主化闘争の闘いの中心になり、マスコミが必死の取材でそれを支えていく様は、さすがに私もニュース映像等でしか知らないのですが、日本の60年とか70年の安保闘争をイメージするものがあります。ただ大きな違いは、日本は軍事政権ではありませんでしたし、すでに日本国憲法に基本的人権が謳われる時代になっていました。

 

当時の韓国では朝鮮戦争を経て、なお軍事独裁政権によって国民を監視し、弾圧する国家が続いていたことを再認識させられました。画面に出てくる街の風景や若者のファッションは当時の日本と大きく変わらないのに、民主主義がある社会と「形だけ民主主義」の社会の違いを考えさせられます。

 

権力者が自らの利権と国家体制を維持することだけを目的に、どんな不正があろうと黒を白と言いくるめる社会です。冤罪であろうとなかろうと、拷問することが正当化される、権力が殺しても真実を隠し通そうとする社会の異常さに、正義を求めて国民が立ち上がったのが32年前の韓国なのです。

 

考えてみると当時の高校生や大学生たちは今現在4050歳代で、この映画のチャン・ジュナン監督のように、まさに韓国の政治・経済・文化など様々な分野で国を支えている人たちということになります。自分たちが命がけで闘い取った民主主義を体感している世代が中心をなしている国が、今の韓国ということになります。

 

いま日本は、徴用工問題では1965年の日韓合意を盾にして・・・とは公式に言っていませんが、韓国に対する半導体材料の輸出規制を行い、韓国では日本製品の非買運動や日本への旅行取りやめがニュースになっています。トランプ流を真似たこのやり方で、果たしてどんな結論が待っているのか、アメリカや中国などの思惑も重なり、先行きが非常に案じられる事態になっています。

 

30年前に民主化闘争を闘った韓国の国民性を考えると、そう簡単に今回の貿易摩擦も治まりそうな気がしません。徴用工の問題にしても、当時の政権による合意で個人の請求権までも消えている訳でないことが確認されていると言われていますし、ぜひ冷静になった外交を進めてほしいと思うのですが、安倍政権でそれが出来るかどうか・・・

 

米中の貿易戦争に加えて、ホルムズ海峡へ派遣する有志連合に憲法関係なしで自衛隊派遣の要請があり、イランをめぐる中東がきな臭い。更にこの日韓貿易摩擦、そして10月からは消費税の10%増税ということで、マクロの外部環境を見ると短期的なスパンで考えても企業経営にとって脅威ばかりが目に入ってきます。

 

話が少しそれてしまいましたが、この映画を観て思うのは、まず日本が「形式的な民主主義でいい」という国に本当にならないことを祈りたい。32年前の韓国の民主化闘争だけでなく、現在進行形の話題として香港で民主主義を求める大規模なデモが繰り返されています。日本では参議院選挙も終わったところで改憲勢力の動きなど色々と言われていますが、憲法を守る闘いがこれから本格的に始まるだろうし、冗談抜きで日本の民主主義と平和を守る闘いとして、それに呼応していかなければと思う。