GTCC と NGCC
GTCCとNGCCは基本的に同じ技術を指しています。
GTCC (Gas Turbine Combined Cycle)は、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合発電システムの一般的な呼び方です。
一方、NGCC (Natural Gas Combined Cycle)は、特に天然ガスを燃料として使用するGTCCを指しています。
つまり：
- GTCCは発電方式の一般的な名称
- NGCCはGTCCの中でも天然ガスを使用するものを特定した呼び方
他の燃料でもGTCCは可能で、例えば：
- 石油を使用したもの
- 石炭をガス化して使用するもの（IGCC）
- 水素やアンモニアを使用するもの
実際の運用では、天然ガスを使用するケースが最も一般的なため、GTCCとNGCCはほぼ同義語として使われることが多いです。
日本では「GTCC」という表現の方がよく使用されています。
GTCCとNGCCの詳しい違い
1. 基本的な定義と範囲
GTCC（Gas Turbine Combined Cycle）：
- ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合発電システム全般を指す総称
- 使用する燃料は問わない
- 「コンバインドサイクル発電」や「複合発電」とも呼ばれる
NGCC（Natural Gas Combined Cycle）：
- GTCCの中で特に天然ガスを燃料として使用するシステム
- GTCCの一種
- 現在最も普及している複合発電システム
2. 使用可能な燃料による分類
GTCCで使用できる主な燃料：
天然ガス（LNG）：
- 最も一般的な燃料
- メタン（CH4）が主成分
- クリーンで効率が高い
- この場合が「NGCC」と呼ばれる
石油系燃料：
- 灯油や軽油なども使用可能
- 天然ガスより若干効率は落ちる
- 環境負荷は天然ガスより大きい
水素：
- 将来的な低炭素化の切り札として期待
- 現在は天然ガスとの混焼が主流
- 専焼に向けた技術開発が進行中
アンモニア：
- 新しい燃料として注目
- 燃焼時にCO2を排出しない
- 混焼の実証実験が進められている
3. 具体的な実例
東京電力の川崎火力発電所：
- GTCCシステムを採用
- 燃料は天然ガス（つまりNGCC）
- 発電効率約62%を達成
- 世界最高水準の効率
大阪ガスの泉北天然ガス発電所：
- 最新鋭のNGCCシステム
- 発電出力約200万kW
- 環境性能と経済性を両立
4. それぞれの特徴と利点
GTCCの一般的な特徴：
- 2段階の発電プロセスによる高効率化
- 燃料の選択肢が比較的広い
- 負荷追従性が良好
- 起動時間が比較的短い
NGCCの特徴：
- GTCCの中で最も効率が高い（約60-62%）
- CO2排出量が少ない（約0.37kg-CO2/kWh）
- 設備がシンプル
- メンテナンスが容易
5. システムの詳細な仕組み
第1段階（ガスタービン）：
- 圧縮機で空気を圧縮
- 燃焼器で燃料と混合・燃焼
- 高温・高圧の燃焼ガスでタービンを回転
- 発電機で電気を生成
第2段階（蒸気タービン）：
- 排熱回収ボイラーで蒸気を生成
- 蒸気でタービンを回転
- 別の発電機で追加の電力を生成
- 使用済み蒸気は冷却して循環
6. 今後の技術開発動向
低炭素化への取り組み：
- 水素やアンモニアの混焼率向上
- バイオガスの利用検討
- CCUS（CO2回収・利用・貯留）との組み合わせ
効率向上の方向性：
- タービン入口温度の高温化
- 材料技術の革新
- 制御システムの高度化
7. 産業への影響
電力会社への影響：
- 発電効率の向上によるコスト削減
- 環境規制への対応が容易
- 設備投資の最適化が可能
製造業への恩恵：
- 安定した電力供給
- 環境負荷の低減
- エネルギーコストの抑制
まとめ
このように、GTCC（ガスタービンコンバインドサイクル）は発電技術の総称であり、NGCC（天然ガスコンバインドサイクル）はその中の主要な一種という関係にあります。
現在のエネルギー市場では、天然ガスの利用が主流であるため、GTCCといえばNGCCを指すことが多いのですが、技術的には様々な燃料に対応可能な柔軟なシステムとなっています。
将来的な低炭素化に向けて、水素やアンモニアなどの新しい燃料への対応も進められており、GTCCという概念はさらに重要性を増していくと考えられます。
（注）
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