1. 石炭とは
石炭は、植物を起源とする化石エネルギー資源です。
大昔（数千万年前〜数億年前）に植物が湖や沼の底に積み重なり、長期間にわたる地圧や地熱などの自然の作用によって、炭素分が濃縮されて形成されました。
石炭の分類
石炭は主に以下のように分類されます：
1. 炭素の濃集度合による分類：
- 褐炭：若い石炭で、水分が多く発熱量が低い
- 瀝青炭：一般的な石炭で、良質の燃料や原料として使用
- 無煙炭：最も炭素分が多く、発熱量が高い
2. 用途による分類：
- 一般炭：主に発電用燃料として使用
- 原料炭：製鉄用コークスの原料として使用
2. 石炭の特徴
1. 安定供給：石炭は世界各地に広く分布しており、地域的な偏りが少ないため、安定的に供給可能な資源です。
2. 豊富な埋蔵量：2020年時点での確認可採埋蔵量は約10,767億トンで、現在の生産ペースでも100年以上採掘可能とされています。
3. 経済性：石炭は比較的安価なエネルギー源として知られています。
3. 石炭火力発電
石炭火力発電は、石炭を燃料として使用する発電方式です。日本の電力供給において重要な役割を果たしており、2021年度の発電電力量のうち、石炭火力発電は2,826億kWhを占めています。
石炭火力発電の仕組み
1. 石炭の燃焼：ボイラーで石炭を燃焼させます。
2. 水の加熱：燃焼熱で水を加熱し、高温高圧の蒸気を発生させます。
3. タービンの回転：発生した蒸気でタービンを回転させます。
4. 発電：タービンに連結された発電機が回転し、電気を生成します。
5. 蒸気の再利用：使用済みの蒸気は冷却されて水に戻り、再びボイラーに送られます。
石炭火力発電のメリット
1. 安定供給：石炭の安定的な供給により、電力の安定供給が可能です。
2. 経済性：燃料コストが比較的低いため、発電コストを抑えられます。
3. 需要変動への対応：燃料投入量の調整により、電力需要の変動に柔軟に対応できます。
石炭火力発電のデメリット
1. 環境負荷：CO2排出量が多く、地球温暖化の一因となっています。
2. 大気汚染：硫黄酸化物（SOx）や窒素酸化物（NOx）などの有害物質を排出します。
3. 灰の処理：燃焼後に残る灰の処理が必要です。
環境対策と今後の展望
石炭火力発電の環境負荷を低減するため、以下のような取り組みが進められています：
1. 高効率発電技術の導入：超々臨界圧発電や石炭ガス化複合発電（IGCC）など
2. 排出ガス処理技術の向上：SOxやNOxの除去効率を高める
3. CO2回収・貯留技術（CCS）の開発
4. バイオマス混焼の推進：CO2排出量の削減
5. アンモニア混焼・専焼技術の開発：CO2を排出しない発電を目指す
これらの技術開発により、将来的には環境負荷を大幅に低減した「ゼロエミッション火力」の実現を目指しています。
一方で、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、石炭火力発電の役割も変化しつつあります。
今後は、変動する再生可能エネルギーの出力を補完し、電力系統の安定性を維持する「調整力」としての役割が重要になると考えられています。
石炭火力発電は、環境負荷の低減と安定供給の両立という課題に直面していますが、技術革新と運用の最適化によって、今後も日本のエネルギー供給において重要な役割を果たしていくことが期待されています。
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