2013年70冊目に読んだ本「クリティカルチェーン」 | 「大学生のためのドラッカー」公式ブログ

2013年70冊目に読んだ本「クリティカルチェーン」

2013年、70冊目に読んだ本はこちらです。

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?/ダイヤモンド社


正直言って、めちゃくちゃ難しく感じました。

氏の著作は「ゴール」から順番に読んでいるのですが、回を重ねるごとに難易度が上がっている気がするのです。それは作中に登場する人物に感情移入できないからか、或いは登場人物の置かれた環境が想像もつかないからでしょうか。

ビジネス小説と銘打っていながらも、感情移入できないビジネス小説なんて、それはもはやSF小説でしかないですよね。



さて、それはさておき、今回の「クリティカルチェーン」でも、ゴールドラット節は炸裂していて、考えさせられる点が幾つかありました。

氏が物理学者であり、ガリレオの湯川学よろしく「結果には必ず原因がある」という信念のもとで「何故そうなったのか?」ということを徹底的に究明しようとしているからだと思います。

この本の中で言われているのは、現状のプロジェクト管理自体の弊害であり、それを取り除くことの勇気であると僕は受け止めました。

不確定要素を管理することを目的としたプロジェクトが、いつの間にか臭いものに蓋をするためのものになっていることにルドラット氏が嘆いているように思えましたし、僕も同様です。


本来、プロジェクトとは「組織」であり、それを納期までに担保された品質でリリースするということは、まさにマネジメントの世界でした。

しかし、その世界は「サイエンス」で実現されなければいけないのに、殆どが「アート」のみに化していることを僕は疑問に感じていました。

言うならば、コーディング作業や新しいアプリケーションを用いた開発などは「サイエンス」なのですが、プロジェクトを管理する、或いは体制を管理するというその手法が「アート」に依存していることに不満を抱いていたのです。

# リベラルアーツという言葉があるように、僕自身はアートなマネジメントを否定はしません。
# それだけに依存したソフトウェア開発の現状を嘆いているのです。

しかし、この本に描かれていたのは、まさに「サイエンス」(しかも極めて物理学的な)であり、さらには深く納得できるものでした。さっそく、会社で実践しようと思います。


さて、今回はこの本を読んで得た気付きを2つ。



①作業にどれくらいの時間が掛かるか申告してくる数字は信じるな
例えばAという作業に10営業日掛かるとして、期日までに終わらなければどうしようという「心理的に安全を確保する生存本能」が働いて、上長に報告する時は13日と言ってしまう。
その作業工程が通ったとして、3日間の余裕があると解った作業者は、最初の頃は「夏休みの宿題は後半で全て終える症候群」に掛かって、13日間たっぷり使いきってしまう。
仮に、これを7営業日以内に終えることができればボーナスが出るとなれば、後半に傾けていたリソースの比重を前に移すに違いない。したがって、プロジェクトマネージャは、作業工数を算出する際に、10日を鵜呑みにするのではなく、7日だと考えるべきである。
そして、残りの3日~5日を「プロジェクトバッファ」として、多少の遅れが発生したとしても、そこで解消できると考えれば良い。遅れが発生しなければ、そのまま進めば良い。


②全体最適を考えろ、部分最適に陥るな
プロジェクトの目標は、期日までに製品を出荷することであり、そのためにWBSなどを用いて作業を細かいタスクに分けて、遅延を明らかにしようとする。つまり、細かいタスクの期日を守ることの積み重ねが、納期を死守することに繋がるという発想である。
しかし、これでは50日掛かるものを50日掛けて実現しているに過ぎず、工数の短縮には到底繋がらない。作業者のレベルがあがれば、45日ぐらいに短縮できるかもしれないが、例えばさらにあと5日削るとなると、プロジェクトマネージャが血相を変えて「それは無理だ」「徹夜が必要になって来る」と悲鳴をあげる。しかし、部分と部分の総和は決して全体にはならない。どれほど部分を積み上げても、だ。部分の積み重ねと全体、プロジェクトマネージャはその何れも見なければならないだろう。
言うまでも無く、部分の積み重ねとは品質であり、全体とは納期である



ゴールドラット氏の言っていることはトヨタ生産方式に近く、同時にリーン生産方式にも近しいものがあります。

インターネットサービスが勃興し、「リーン」が持て囃されている今だからこそ、氏に現在各地で巻き起こっているプロジェクト管理と納期に纏わる争いについて語って欲しいな、なんて思いました。