さてさて、それでは東京に着かせましょう


私は実際に東京に行ったことはありませんし、
昭和20年の東京の写真というのも、
見たことはあるのでしょうが、記憶に残っておりません。

東京大空襲のときの映像か、関東大震災(?)のときの映像か、
そのどちらかなら記憶の片隅にありますね。


つまりどういうことか。
細かな描写はできません
ということです。

というより、もう忘れていることですが、
これは私の夢の話なのです。
実際に見た夢のなかで東京がどのように描かれていたのか、
ということについて、ここでひとつ説明をしておきましょう。

私が実際に見た東京の風景はもちろん、
現代の東京の風景でした!

ですから書けません。

ということで、
いざ続きをば。


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本当に1時間で東京は浅草に着いた。
現在、私と彩都はとある酒場に居る。
彩都の、今日は飲み明かそう、という提案を実行しているわけではなく、
あくまで情報収集のために酒場に居るのだ。
情報収集は酒場で、というのは黴臭い考え方かもしれないが、
今私たちが居る酒場のような、常連だけで客層が構成されていない酒場では、
これがなかなか通用するものである。
彩都の車はこの店の外に駐車している。
現代とは違い、首都の、しかも繁華街に路上駐車していても
まったく問題はないらしい。
かといって、道路を走っている車の数は少なくはない。
至るところにアンバランスな印象を受ける時代になってしまっている。

酒場では幾つか有益な情報を得ることができた。
情報収集には彩都の力添えもあった。
私は酒場に入る直前にも、彩都からの助力の申し出を丁重に断った。
収集する情報の種類を彼に教えるということは、
私が何を探っているのかを悟られる危険を含むからだ。
しかし、本人の意思は頑なだった。
「俺の土地に人工衛星が落ちたんだ。
 それについて情報収集する分には文句言うなよな」
だそうである。
その件についても詳しく知りたいということだけは、彼に伝えてあった。
私にとって、今回の人工衛星開発から墜落までの一件は、
純粋なイレギュラーであったので、単純に私の好奇心が騒いだのだ。
しかしそれはおそらく、根の部分でK氏の件と関係している。

私たちは酒場に入ってから一旦別行動を取り、手分けして情報を集めた。
有益な情報というのは、まず人工衛星についてのものだ。
どうやら人工衛星は、昼間私たちが遭遇したものの他に、
もう一基墜落しているらしい。
場所は東北地方のどこかだという話だ。
そして豊田が開発した人工衛星は全部で二基であったという情報もあった。
ということは、豊田の人工衛星打ち上げ実験は
完全な失敗に終わったということだろう。
やはり、一握りの人間の技術力では無理があったということだろうか。

また、人工衛星に関連した情報といえば、人工衛星墜落直後から
連合軍、特に米軍に気になる動きが出てきたらしい。
米軍は、以前から豊田の急激な技術力の発展に脅威を感じていたらしいが、
人工衛星墜落の報告を受け、何かの最終決定をしたそうだ。

人工衛星開発に関する機密情報管理の甘さも目立つが、
米軍の情報管理能力の甘さも負けてはいない。

K氏についての情報は、ほとんど誰からでも聞くことができた。
なぜならK氏は現首相となっているからだ。
首相の話ならば誰でも知っていることだろう。

K氏は10年程前に衆議院選挙に当選、
以後破竹の勢いで政界を上り詰め、異例の早さで内閣総理大臣となった。
それが今から3年前の話だそうである。
政財界の大物連中がこぞってバックについているとか、
皇室関係者までもが彼の後押しをしているなどという噂も聞けたが、
私が知りたいこととは少し路線が外れているため、
深く突っ込んで聞きはしなかった。

K氏はこの時代でもやはり“やり手”で、
連合国とは和平条約を結ぶ方向で話が進んでいるらしい。
戦争は激化しているものの、それは表面的なもので、
終戦は目前といった状態なのだろう。

しかしここにきて、数年前まで噂されていたが
最近ではすっかり聞かなくなった米軍の新型爆弾についての話が
また蒸し返されるようになっているという。
人々の間には、新型爆弾の話と、今回の人工衛星墜落の報告を受けた米軍が
何かの最終決定をしたという話を繋げて考える者もいるようだ。

確かにそう考えることもできる。
このままでは米国にとって、いや世界にとって、
豊田を擁する日本の技術力は脅威となるだろう。
この段階で潰しておこうという腹づもりかもしれない。

歴史は変えられないということだろうか。

「で、これからどうするんだい?
 別に、今日はこの辺で宿を取って、
 明日になってから考えてもいいけどな」
彩都はどうやら私と行動を共にすることに決めたようだ。
「そこまでしてもらうわけにはいかないし、
 これ以上足を突っ込んだら私の目的を知ることになる。
 そうなったら、あんたを殺すしかなくなる」
彩都は飲んでいた洋酒を吹き出した。
「お前は小説に出てくるスパイか何かか?
 ああ、日常生活でそのセリフを聞くことになるとは思ってなかった」
私の行ったことは真実なのだが、そうか、
普通の生活を送っている者にはそう受け取られるのか。
「私は明日東京散策でもするよ。
 首相官邸の辺りにも行ってみたいし」
私は任務の機密保持については、半ばどうでもよくなっていた。
それが、酒のせいなのか、この不思議な男のせいなのかはわからない。


to be continued…