さて、そろそろ佳境にさしかかって…

たらいいなぁ。


まあ、しかし、もう開き直りました

いつまでかかってもいいや。


長くなれば長くなるほど、
後でまとめることができなくなるんですが、いいや。


じゃあ今回もいきあたりばったりで書きます


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「そう、まるで計算していたかのようだ。
 いや、むしろ『知っていたかのようだ』と言った方が適切かもしれない」
男は悦に入っているのか、何か匂いを嗅いでいるのかわからない表情で、
誰に向けたものでもない言の葉を放った。
「それはごまかしているのか?」
私は、この男にも何か人に言えぬ事情があるのではないか、
そう考え始めていた。

「そんなことより、ここでもたもたしてたら警察が、
 いや、軍が駆けつけて来るぞ。
 何か面倒なことになるかもしれないな。
 特にあんたはまずいんじゃないか?
 何か人に言えない事情でもあるんだろ?」
この男の勘は正しい。
「人工衛星」墜落の件について、私は単なる目撃者でしかないが、
「人工衛星」打ち上げ自体が、この男の言うとおりなら
国家の機密事項なのである。
素性を調べられる(私の場合は絶対に判明しないが)とか、
そのくらいならまだいいが、最悪の場合は口封じというのか、
生命の危機に瀕する状況にならないとも言えない。

「そうだな。なかなかいい勘だ。
 あんたの言うとおり、私はここに居るとまずいことになるだろう。
 もしよかったら、ドライブの続きがしたいんだが…」
男は、待ってましたとばかりに車に乗り込む。
「そうくると思ってたよ。
 それに俺もドライブは嫌いじゃないからな。
 ただ気掛かりなのは、俺の愛車がさっきの衝撃で
 どこかにダメージを負っているかもしれないってことだ」
そう言いながら男は車のエンジンをかける。
何の問題もなくエンジンはかかった。
「さすが俺の愛車、丈夫なもんだ。
 よし、愛車の調子もいいようだし、
 このまま東京まで行っちまうか」
「東京まで簡単に行ける距離なのか?」
私は内心、少し驚いた。
ここは東北の辺りだろうと推測していたからだ。
男は変わらず前を向いたまま話す。
「ああ、ここは埼玉の田舎だからな。
 それに比較的東京寄りだから、1時間もあれば新橋ぐらいまで行ける。
 あまり道路が混んでなければ、だけど。
 戦争も激化してるし、市民もそんなに出歩いていないだろうから、
 たぶん大丈夫だと思うよ」
そうなのか。ここは埼玉だったわけか。
これは好都合だ。
K氏が居るのはおそらく東京だ。
東京まで行けば、彼の足跡を辿ることができるだろう。
最悪でも何かの手掛かりは得られるはずだ。

しかし、この男、さっきから私の目的を見透かしているような言動をしている。
本当に一体何者なのだろう。
「ここまで一緒にドライブさせてもらって今更だが、
 名前をきいてもいいかな?」
私は姓名不詳の運転手に尋ねる。
「名前か、そういえば名乗ってなかったな。
 俺の名前は彩都だ。サイト。呼び捨てでいい」
「彩都か。良い名前だと思うが、女性的な気もするな」
私は次第にこの男に心を開きつつある。
私は人見知りをかなりする質である。
そうでなくても、一応極秘任務を遂行している手前、
人と親しくするのは控えようという心構えでいるわけだが、
はじめからこの男にはあまり壁を感じず、
一定の距離を保とうという意識も途中から消え失せていた。
これではエージェント失格かな、と心の内で呟く。

「女性的だけど、良い名前だろう?
 結構自分でも気に入っているんだ。
 名前ってのは思春期ぐらいで一度嫌いになって、
 それが転じて二十歳すぎくらいから好きになるもんだろ?
 若いときは女性的故に嫌いだったさ」
そういうものかな、と私は思った。
確かに私もそうだった気がする。
ありきたりであるとか、古めかしいとか、
何らかの理由で、自分の名前は一度嫌ってしまうものかもしれない。

「私の名前は…」
と私が言いかけたとき、彩都と名乗った男がそれを止めた。
「いいよ、あんたは名乗らなくて。
 何か特別な事情があるんだろう。
 そういう奴は名乗らなくていい。
 名乗ったとしても、それは高確率で偽名だしな」
どうやら、彩都は私が思っていたよりもドライで合理的な男のようだ。
「名前も知らない者を東京まで乗せて行ってくれるのか?」
彩都は微笑し、何を今更、と言った。
「行ってやるさ。地主ってのは暇なんだ。
 それにあんたの仕事の手伝いをしてやってもいいぞ。 
 何やら危険な香りがするからな。
 それに、さっきの人工衛星が落ちたのは俺の土地だ。
 家に居ると警察やら憲兵やらがいろいろ来そうだから、
 少しの間家を空けておきたいのさ」
彩都によると、人工衛星打ち上げ計画は軍の機密事項であったはずだ。
確かに、彩都の家にその関係者が多数訪れることになるだろう。
その者らの目的は口止めだ。
しかし計画の情報さえも漏れているほどの管理の甘さだ。
口止めは一応徹底してなされるだろうが、どこかに穴が残るだろう。
「彩都、あんたは面白い人間だな。
 だんだん好意が持ててきたよ。
 しかし、私の任務の手伝いはしなくていい」

彩都は楽しそうに、日が沈みかけた茜空に向けて言った。
「さあ、今日は浅草で飲み明かそう」
私には任務があることをわかっているくせに、この男は。


to be continued…