時々まゆ毛の生える犬ケンタに対し
友人達は、少しでも慣れようと様々な作戦を練っていた。
ある友人は
「大長、俺は昨日“犬の気持ちが解る本"という題名の本を買ったゾ!」
得意気に言ってきた。
「何て書いてあった?」
「まずしゃがみ、目線を犬に合わせるんだ。」
「うん、それで?」
「それでだな、目を合わせると敵だと思われるから目を瞑る。」
「へ~っ。それで?」
「それでだな、“お控えなすって"の要領で掌を上にして、犬の目線より下の方に手を出す。」
「??危なくね~か?」
「うん、大丈夫だ。そしてルルルルルと言う。」
「そうなんだ!ぢゃ今日ケンタに通用するか来てみるか?」
「おぅ行くよ。」
「よし来いっ!!」
友人の心意気を買い、大山茂師範並みの気合いで答えた。
我が家に近付く、足音や匂いからか、50m位離れた場所でも既に吠えている。
「ウォ~~~~~~~~~~ッ!」
「・・・・・。ヤベェよ。」と友人。
ケンタの姿を見る前に戦意喪失の様子。
「大丈夫だよ。とりあえず鎖に繋がってるから。」
グラグラの門の前に立つと、一際ケンタの怒り?も激しさを増した。
「ウォ~~~~~~~~~~ッ!!!
ガチャン!!(エサ入れ食器が引っくり返る音)
ドタン!!(ケンタ小屋が引っくり返る音)」
ダッシュしたりジャンプしたり、暴れまくる。
「今日ケンタヤバくねーか?」友人ビビりまくる。
「まぁ本を信じてやってみろ。」無責任に僕が言う。
門を開ける。
「ウォ~~~~~~~~~~ッ!!ウォ~~~~~~~~~~ッ!!!」
ケンタ激しさを増す。
「・・・・・。」友人ビビって身動き取れず立ち尽す。
「犬の気持ちが解る本だろ?本を信じてやってみろ!」
「分かった。」と言って、ケンタが届かないギリギリの所にしゃがみだした。
「ウォ~~~~~~~~~~ッ!!!」
しゃがんでも、ケンタの勢いが増しただけで、おとなしくなる気配無し。
頑張って薄目になる友人。完全に目を閉じる事はできなかった様だ。
「ウォ~~~~~~~~~~ッ!!!!」
ビビりながら掌を出す友人。
「ガルルルル!フッガ~~~~~~~~~~ッ!!」
鼻にシワを寄せ、白い牙を見せ、本気で噛みつく戦闘モードに入ったケンタ。
「ルルルルル・・・・・。」
と必死に友人が言う。
「フガ~~~~~~~~~~ッ!!!」
ケンタの怒りも最高潮。
「ダメだ~~ッ!」
ついに耐えられず、ギブアップした友人。
全くケンタには通用せず、犬の気持ちが解る本は、すぐに古本屋に持って行ったという。
ムツゴロウ先生でも噛みつかれるのでは無いか?と思われる、ケンタの全盛期であった。
またまた家に上がる時、一騒動あった事は言うまでもない。
皆ケンタに恐がっていた。しかし気になっていた。何とかなつかせたいと。
今のところ成功者はゼロだった。
次回は、狂暴なケンタでさえも撫でたい程、犬大好きな友人が来た時の話し。
ケンタを撫でる事ができたのか?
ケンタはなついたのか?
続きはまた。