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最寄り駅の改札を抜けると、たくさんの人達が会場へと歩いていた。
みんなワクワクして楽しそうな顔。
「すげー人。何か初詣みたいだな」
そういうヤツの顔も笑っていて、目がきらきらしてる。
「そうだ……痛っ」
後ろからぶつかられてよろけた。
「どんくさいなー相変わらず。ほらっ」
言うな否やヤツが私の右手を掴んだ。
私の手に、ヤツが、ヤツの手が、触れた。
「お前の手冷たいな」
「冷え性なんだよね」
手のひらから、ヤツの暖かさが伝わってくる。
見上げると、ヤツが私を優しそうな目をして笑っている。
緊張と興奮で、冷たいはずの手のひらから湯気が立ちそうだった。
手のひらから自分の動悸と動揺が伝わらないように、口が勝手に動く。
「あ、あのさ、前から気になってたんだけど」
「あ?」
「メールの最後に『××』っていつも付けてるじゃない? あれ何?」
「え、知らないの? 手紙の最後とかに良く書くじゃない。KISSだよ」
キス?!
「えっ、あれキスって意味なの?」
「そう、家族とか友達とか、恋人とか、身近にいる人たちに向けての……好意を示す挨拶?
ほら、外国って頬にキスするのが挨拶じゃん」
「あー成程ー」
好意。
私はヤツにとって身近な人で……好意を持ってくれてるって思っていい、の?
「何だろう、ってずっと思ってたよ。最初はNOって意味かと思って、ちょっと悩んだ」
「ははっ、ホントに?! 昔から使ってたから当たり前に付けてたよ。『Sugar Sugar』とも言うんだ」
「Sugar Sugar……何か可愛い」
「そ、親愛なる者への軽い挨拶だからね」
そう言いながらも、ヤツはしっかりと私の手を握っている。
手が暖かくて、顔が自然とほころんでくる。
親愛なる者へ。
少なくとも、手を握ってくれるくらいには、近くに感じてくれてるんだ。
嬉しくて、顔が自然とほころんでくる。
続く