4


最寄り駅の改札を抜けると、たくさんの人達が会場へと歩いていた。


みんなワクワクして楽しそうな顔。


「すげー人。何か初詣みたいだな」


そういうヤツの顔も笑っていて、目がきらきらしてる。


「そうだ……痛っ」


後ろからぶつかられてよろけた。


「どんくさいなー相変わらず。ほらっ」


言うな否やヤツが私の右手を掴んだ。


私の手に、ヤツが、ヤツの手が、触れた。


「お前の手冷たいな」


「冷え性なんだよね」


手のひらから、ヤツの暖かさが伝わってくる。


見上げると、ヤツが私を優しそうな目をして笑っている。


緊張と興奮で、冷たいはずの手のひらから湯気が立ちそうだった。


手のひらから自分の動悸と動揺が伝わらないように、口が勝手に動く。


「あ、あのさ、前から気になってたんだけど」


「あ?」


「メールの最後に『××』っていつも付けてるじゃない? あれ何?」


「え、知らないの? 手紙の最後とかに良く書くじゃない。KISSだよ」


キス?!


「えっ、あれキスって意味なの?」


「そう、家族とか友達とか、恋人とか、身近にいる人たちに向けての……好意を示す挨拶?


ほら、外国って頬にキスするのが挨拶じゃん」


「あー成程ー」


好意。


私はヤツにとって身近な人で……好意を持ってくれてるって思っていい、の?


「何だろう、ってずっと思ってたよ。最初はNOって意味かと思って、ちょっと悩んだ」


「ははっ、ホントに?! 昔から使ってたから当たり前に付けてたよ。『Sugar Sugar』とも言うんだ」


「Sugar Sugar……何か可愛い」


「そ、親愛なる者への軽い挨拶だからね」


そう言いながらも、ヤツはしっかりと私の手を握っている。


手が暖かくて、顔が自然とほころんでくる。


親愛なる者へ。


少なくとも、手を握ってくれるくらいには、近くに感じてくれてるんだ。


嬉しくて、顔が自然とほころんでくる。



続く