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眩しい……。
目を開けると、電灯が煌々と付いている。
白い天井。
何だ、ここ。
周りを見ようとして、体が動かないことに気づく。
ベッドの脇に点滴が置いてある。
心電図が規則正しい音を立てる。
口には酸素マスクが掛けられている。
ああ、そうか。
信号待ちをしていて、後ろから追突されて玉突きになって……。
どのくらい経ったんだろう?
「気づいたね、良かった」
医者が声をかけてくれた。
話しかけようとしても、声が出せない。
「一週間意識が戻らなかったから、心配したよ」
一週間。
「体の怪我は全治1ヶ月ってところだから、じきに話も出来るようになるよ」
そういうと、医者は看護師に何かを指示して部屋から出て行った。
……。
首をひねって、窓の外を見る。
空は赤くなり、後追いするように紫色の空が広がっている。
強い風が黒いシルエットになった木を揺らしている。
あいつ、もうあの雲の上に行ったのかな。
借りてたものを返して、すっきりして。
あそこでずっと待ってたのかな。
いつから待ってたんだろう。
私がいつ行くかも分からないのに。
行かなかったかもしれないのに。
命を借りて、返しにきたなんて。
律儀な奴。
フロントガラスが割れた瞬間、このまま死んじゃってもいいかと思ったのに。
やっと自由になれると思ったのに。
待ってる人なんていないのに。
なのに。
このタイミングで返しに来ないでくれよ。
返されてしまったら、その分生きなきゃならないじゃないか。
ひどいなぁ。
これから過ごさなければならない、全く希望の見えない未来を思って、空を見上げる。
お前、責任持って、そこから見ておけよ。
私の言葉に応えるように、星が一つ輝き始めた。
『かえってきたもの』
了