そっと自分の手を握った君を、見逃すわけがなかった。


掴んだ君の指先はひどく冷えていて。


そのまま手を離すなんて出来なかった。


慌てた君が手を離そうとしたけれど、させなかった。


こんなに桜が綺麗に咲いていて、皆上を向いて歩いている。


俺達が手を繋いでいても、誰も注目なんてしない。


「……手、温かいね」


「うん」


「いいの? 手繋いでも」


「うん」


君が本当に嬉しそうに微笑んだ。


桜の蕾がみるみるうちに開くように、艶やかに。



空を見上げる。


曇り空に浮かび上がる、たくさんの桜の花。


この花たちが、少しでも長く咲き続けるように。


柔らかな日差しを与えてくれる曇り空。


きっと俺達も。


外で会う事や手を繋ぐ事が出来なくても。


穏やかに密やかに二人の時間を過ごせれば。


君に会い続ける事が出来る。


繋いだ指先に伝わる冷たさ。


触れなければ知らなかったこの感触を、離したくないから。


二人の間には、いろんなモノが立ちふさがるけれど。


せめて二人の時には、この手を温め続けたい。



やっと見つけた自販機に、君が駆け寄る。


俺の手を握ったまま。


つられて俺も駆け足になる。


ココアにするかコーヒーにするか真剣に迷う君の横顔。


俺を振り返って、『どうしよう』と言いたげな顔で微笑んだ。



『花曇り』






皆様、また来年♪