いつも君は、何かに怯えたような顔をして。


隣を歩いていても、ふっといなくなってしまうような気がして、


手を繋いであげたい気持ちがあるのだけれど。


そんな事をしたら、二人の関係を言いふらしながら歩いているのと同じになってしまうから。


コートのポケットの中で、油断すると君へと伸びようとする手を、いつも握り締めていた。


普段君は何を食べてるんだろう?


俺と一緒の時はあんまり食べてなくて。


『お腹いっぱい』って君は言うけど。


俺の子供よりも食べてないように思う。


俺の子供。


妻。


二人が、俺の人生にかけがえのないものなのも確かで。


その存在が、君を緊張させているのも確かで。


だからこそ、本当に二人っきりになった時、君を抱き締める腕に力がこもる。


俺の腕の中で君は、やっと肩の力を抜いて、真正面から俺の目を見つめてくれる。


涙ぐみそうな君の目から、喜びが溢れ出てくる。


俺はいつもその目にやられて、何もかもを忘れる。


仕事も。


家族も。


俺の世界は、目の前の君だけになる。


君を引き寄せて、髪の毛に顔を埋める。


甘い匂い。


冷たい耳を軽く噛むと、君の口から溜息が零れる。


溜息を共有する。


二人の時間が始まる。



続く