1
カーテンから朝日が差し込んで、明るくなった部屋。
窓を開けて、朝の空気を取り込む。
快晴。
青空に桜の枝が伸びている。
その枝々に、膨らみかけた蕾がたくさん付いている。
日当たりが良い場所の樹は、すでにいくつか綻んでいる。
『この時期の桜は、まだ花が開く前から、樹全体が紅く染まってるんだ』
あなたの声が頭に蘇る。
本当に桜の樹の周りが、紅色の霞がかかったように見えている。
もうすぐ、一年経つ。
初めて、あなたと結ばれた日から。
月に1回か2回訪れる、宝物のようなあなたとの時間。
誰かに見られてはいけない。
だから、影が長く伸びて顔を隠してくれる夕暮れに、いつも待ち合わせた。
ちょっとだけ仲の良い、ただの友達の振りをして食事をする。
あなたに会えた嬉しさで胸がいっぱい過ぎて、私はいつもより小食になってしまう。
こんな時に、お酒が飲めればいいのに。
いつでも素面の私は、何もかもを忘れる事が出来なくて。
人目がある場所では、素直にあなたの目を見る事が出来ない。
いつか誰かに、気付かれてしまいそうで。
臆病者なのだ。
この時間を永遠に取り上げられてしまう状況にしたくない。
その緊張感で、段々と息が浅くなり早くなる。
苦しくてもう限界になってしまう頃、やっとホテルのドアが閉まる。
人目から解放される。
やっと安心して、溢れ出す自分の気持ちに押し倒されて、体はあなたへとしな垂れかかる。
続く