カーテンから朝日が差し込んで、明るくなった部屋。


窓を開けて、朝の空気を取り込む。


快晴。


青空に桜の枝が伸びている。


その枝々に、膨らみかけた蕾がたくさん付いている。


日当たりが良い場所の樹は、すでにいくつか綻んでいる。


『この時期の桜は、まだ花が開く前から、樹全体が紅く染まってるんだ』


あなたの声が頭に蘇る。


本当に桜の樹の周りが、紅色の霞がかかったように見えている。


もうすぐ、一年経つ。


初めて、あなたと結ばれた日から。



月に1回か2回訪れる、宝物のようなあなたとの時間。


誰かに見られてはいけない。


だから、影が長く伸びて顔を隠してくれる夕暮れに、いつも待ち合わせた。


ちょっとだけ仲の良い、ただの友達の振りをして食事をする。


あなたに会えた嬉しさで胸がいっぱい過ぎて、私はいつもより小食になってしまう。


こんな時に、お酒が飲めればいいのに。


いつでも素面の私は、何もかもを忘れる事が出来なくて。


人目がある場所では、素直にあなたの目を見る事が出来ない。


いつか誰かに、気付かれてしまいそうで。


臆病者なのだ。


この時間を永遠に取り上げられてしまう状況にしたくない。


その緊張感で、段々と息が浅くなり早くなる。


苦しくてもう限界になってしまう頃、やっとホテルのドアが閉まる。


人目から解放される。


やっと安心して、溢れ出す自分の気持ちに押し倒されて、体はあなたへとしな垂れかかる。



続く