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「さっきは思い切ってたねー、どした?」
興奮が醒めないフロアで、友達に聞かれた。
友達の顔が赤くなってる。
踊ってたもんね。
「別に。別れただけ」
「別れた?!」
「そう、それだけ」
「あー思い切ったねー……んじゃ次だね、次! おめでとう!」
「あははっ、そうだね次だね」
次はもういるんだけどね。
ステージに小さな顔が現れる。
きっと。
好きだったのだ。
だけどいつの間にか変色して愛着だけになっていた。
執着かな。
最初の「好き」を何度も思い返して胸ときめかせた……振りをした。
ときめきが薄れていく事を、恋が愛情に変わったんだと思ってた。
この人が好きなんだって、必死に思い込もうとしてた。
それが間違ってるって気付けたのは。
自分の気持ちに正直になる事。
それに気付かせてくれたのは。
耳に馴染んだ音楽が流れ、柔らかな声が鼓膜を揺らす。
耳から入り込んだ声が蜂蜜のようにゆっくりと心をコーティングしていく。
口に含むとほろりと溶けて消える砂糖菓子。
Sugar.
彼の声に包まれると、自分が砂糖菓子になったような気がする。
そんな幻想を起こさせる、この声こそが麻薬。
彼の歌声があれば、酒もドラッグも必要ない。
背骨に電気が走って、押し出される溜息。
体温が上がって、薔薇色に染まる頬。
もっと彼を見たくて、開かれる目。
脳味噌が一度覚えた快楽は、体から消えない。
何度でも何度でも、繰り返し欲しくなる。
私をドキドキさせるモノ。
たった今お別れした事なんてすっかり忘れて、ステージの彼に集中する。
恋かどうかは分からないけれど、確実に私の背中を押した彼。
次は、あなたとあなたの歌。
覚悟してね。
どこまでも追いかけて、その声を聴き続けるから。
アルコールのグラス越しに覗き込んで、彼をグラスの光の中に閉じ込める。
私の決意に応えるように彼のファルセットが甘く響き、私はまたほろりと蕩け出す。
『Sugar』
了
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□Main Theme□
「SUGAR SHACK」(『SUGAR SHACK Official soundz mixed by DJ HAL』より)
明日は2nd Season Last Night。
皆様、素敵な夜をお過ごし下さい♪