部屋の中に、あの人の歌声が流れる。


飽きもせず、何度も。


一日中彼の声を聞いている。


聞く度に甘い声に包まれて、優しい気持ちになれる。


落ち込んだ時も、イラついた時も。


彼の声が耳に響けば、心に青空が広がる。


彼の歌無しではもう生きていけない。



彼のホームページでライブ情報を調べては、出かけて行く。


彼の生歌を聞きたくて。


大概が深夜のクラブイベントだ。


翌日の仕事が辛いけど、彼の歌には敵わない。


クラブだなんて……行った事すらなかったのに。


馴染めなかったタバコ臭い空間が、次第に居心地の良い空間に変わっていく。


怖気ていた派手な人達も、話してみれば、R&Bとお酒と楽しい事が大好きな可愛らしい人達だった。


何の利害関係もない分、自分の思っている事をそのまま話せる人達で。


時にはそれがただのワガママだったりもするけど。


会社の同僚なんかよりも、素直に自分を出す事が出来た。




そして、彼の歌。


何度聞いても、いつ聞いても。


新鮮な驚きをくれる。


あるいは包み込むような優しさを。


生まれてから受けた優しさをかき集めても、足りないくらいの優しさ。


涙が出る程体が震えてしまうのは、声に乗って彼の愛が伝わるからだろう。


愛、優しさ。


日常の中で消耗してしまうモノ。


足りなくなったモノを補充する為に、今夜もまた、クラブへ出かける。


何よりも楽しくて、大好きな、大切な場所へ。



続く