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不思議だったんだ。
何故今まで存在に気付かなかったんだろう。
毎月一回開かれるクラブイベント。
間違いないシンガーのライブ目当てに集まる、パーティピープルでごった返すフロア。
薄暗い照明の中で、彼女の周りだけが、時間が止まったようにほんわりと白く浮き上がって。
掃き溜めの鶴。
いや、俺の聖域。
煙草の煙やアルコールの匂いが漂うフロアに、彼女は似つかわしくなくて。
うーん、とにかく守らないと、と決めてしまった。
決めたと言ったって、まだ一度も話したことなんか無かったけど。
要するに、誰にも渡したくないって思ったって事さ。
彼女は友達と来てたみたいで、何人かと微笑みながら話していた。
友達がどこかに行ってしまうと、一人でバーカンでグラスを傾けていた。
退屈するでもなく、この空気を楽しむようにリズムをとって。
いつの間にか、彼女しか見てなかった。
顔見知りになった仲間たちと繰り広げる楽しいバカ話もうわの空で。
彼女に他の男が寄り付かないか心配で。
ちらちらと彼女を見てしまう。
何度か目が合う。
その度に、慌てて目を逸らしてしまう。
俺何やってんだ。
さっさと話しかけに行けよ、いつもみたいに。
でも、えーっと、いつもどんな風に声をかけていたっけ?
そんな事すら分からなくなるほど、彼女は魅力的だった。
どこがって……分からない。
クラブに良くいるタイプではあるんだけど……初めて見るタイプで。
黒くて長い髪は手入れがされててツヤツヤで。
触ったらきっと少し冷たくて重みがあって。
肌は白くて、頬だけが酔ったせいで薔薇色で。
触ったらきっと柔らかくて。
俺の、理想の女だったんだ。
続く