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流れるタバコの煙。
アルコールの匂い。
辺りに眩い光を撒き散らしながら回るミラーボール。
相変わらずのクラブの夜。
一人でステージに上がった俺に、客席がざわめく。
分かっている。
皆、リナさんを待っていたのだから。
ピアノに指を置き、会場に第一音を響かせると、ざわめきが徐々に引いていく。
声を出す。
本当なら、リナさんが歌っていた部分を。
客席からたくさんの「?」が飛んでくる。
構わずに歌い続ける。
客席は見ない。
そこにリナさんの残像を探してしまうから。
逆光の中で浮き上がる、堂々と伸ばしていた背中を。
一気に3曲歌った。
額から汗が流れ落ちてくる。
客席から拍手が起こる。
「リナはどうしたんだー?!」
それを機に、客席からリナさんを呼ぶ声があちこちで起こり、
オーナーが何とかしようとしていたが、治まる事は無く。
誇らしい気持ちが沸き起こる。
リナさん、こんなに人気あったんだよ。
客席の声がどんどん大きくなっていく。
きちんと話さなければ、この声は治まらないだろう。
「皆さん、聞いてください」
俺は客席に向かって、話かけた。
続く