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海の中が渦を巻いて、視界が利かない。


木っ端や魚が、うねる海水に巻き込まれ流されていく。


俺、海にいるのか。


暗い海の中、遠くから歌が聞こえる。


リナさんの少し低い、ベルベットみたいな声。


波のリズムを刻むメロディ。


青い空と。


透明な海と。


寝転ぶリナさんと。


永遠に続く波音と。


俺がリナさんを想って作った曲を、リナさんが歌いながら近づいてくる。


一緒に歌おうとしても、声が出ない。


あ、海の中だからか。


何でリナさんは歌えるんだろう?


……そうか、リナさんは人魚姫だった。


しばらくリナさんの歌声を聞いて、また歌いたくなった。


『リナさん、砂浜に上がって一緒に歌おう』


そう頭の中で伝えて、リナさんの手を握った。


薬指にリングがない。


そう気付いた瞬間、何かに手を弾かれた。


?!


リナさんの手じゃない。


指輪の石と同じ色の……?


目の前のリナさんは、打ち上げられた時と同じように、何も身に着けていなかった。


左胸の上の、魚の形の小さな痣。


その痣に触れようとして、また手を弾かれる。


魚の尾。


良く見ると、リナさんの腰から下は、魚のような鱗が付いてなだらかな曲線を描き、


その先に魚のような尾が付いている。


グリーンエメラルドの鱗で覆われた下半身。


そうだよな、人魚だもんな。


リナさんの後方から光が近づいてきて、徐々に光が強くなっていく。


尾ひれの先から、小さな泡が立ち上り始める。


リナさんが、溶けて、泡に、なっていく。


慌てて泡をかき集めようとしても、指の間からすり抜けて行く。


そんな事をしている間にもどんどんリナさんの体は泡に変わっていき。


魚の形の痣も赤い泡に変わり。


唇が泡に変わる寸前に、リナさんの声が頭に響いた。


『ごめんね。ありがとう』


最後の髪の毛まで泡になったリナさんは、光の中へと吸い込まれていった。


俺もリナさんだった泡たちを追って、光の中へ飛び込んだ。



続く