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「あたしは……ジャズシンガーだったの。


ホテルのバーで、ピアノに合わせてリクエストで歌う。それがあたしの仕事。


たまにライブをやらせてもらったり。


一緒に暮らしてた人はピアノ弾きで。


繊細だったけれど、彼の指から流れ出る音楽は、魂振るわせるほど素晴らしかった。


大好きな音楽と、大好きな人に囲まれて、あたしは幸せだった」


「……」


「ある日、音楽プロデューサーという男が現れて。


『彼と一緒にデュオとしてデビューしないか』と持ちかけられて。


生活に満足してたあたしは乗り気じゃなかったけど、


いつかはメジャーデビューしたいと彼が言っていたから、話を受けて。


デビューするにはいろんな準備が必要でお金がかかるからと言われて、渡して。


そのうち貯金も無くなって。


それを伝えると『金を出してくれそうな人を紹介する』って言われて。


彼は喜んで。


『一人で来て』って言われて、気が進まなかったけど、一人で指定された場所へ向かった」


「……」


「そこはホテルの最上階の部屋で……電気が付いてなかった。


恐る恐る部屋の奥へ進んで行くと……たくさんの男がいたの」




リナさんの手が震え始める。



「プロデューサーもいて、どういう事なのか問いただしたら、


『この皆さんがデビューの為のお金を出してくださるんだ。お礼をしなければ』って。


その言葉を合図にして、男達に押さえつけられて……」


「……」


「その中には、いつもバーに来て歌をリクエストしては、


『良い声してるね』って喜んでくれてたお客さんも混ざってて。


騙された。


そう思ってみても遅くて。怖くて。頭の中に嬉しそうに笑う彼の顔が浮かんで。


痛みと怖さで、涙も流せなかった」


「……」


「朝方ぼろきれみたいになって解放されたけど、これだけじゃ終わらなかった」




続く