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「台風3号が、南南西で発生しました。明日の夜には上陸するでしょう。
島民の皆様、お気をつけ下さい」
夕方のテレビ番組で、お天気お姉さんが憂鬱なニュースを読み上げる。
「もうそんな季節か」
親父がぼそりと言う。
夏が近づいてきたからな。
もう半袖でも汗をかく。
「カイト、今日中に外のモノを中にしまっておいて」
「うん」
子供の頃から大きな台風の直撃を食らってるから、慣れっこだ。
太平洋で発生した台風は、温められた海水からの上昇気流でどんどん勢力を増して、
島を直撃する。
その風は全てを吹き飛ばす。
樹も、重い看板も、車も。
時には家も。
だから島には鉄筋の家が多い。
うちもそうだ。
明日は店の客も少ないだろう。
台風の日に出歩く島民はいない。
停電や断水の準備もしとかなきゃ。
母さんと俺のやり取りを、不思議そうな顔でリナさんが聞いている。
そうか、リナさん台風の凄さを知らないもんな。
「台風が来る時は、いろいろ準備が必要なんだ」
『そんなに、凄いの?』
「うん」
『明日の、ライブは?』
「うーん、ちょっと無理かも。クラブまで辿りつけないし、お客さんも来ないと思うよ」
『そう……』
リナさんが残念そうに笑う。
「レイナちゃん、明日はトモヤ君とリョウイチさんと家においで」
母さんがレイナさんに誘いをかける。
「いつもすいません、ありがとうございます」
「いいのよ、台風の時は皆で楽しまないとね」
『?』
「タイフーンパーティだよ。皆で食べたり呑んだりして、台風をやりすごすんだ」
『タイフーンパーティ?』
「そう。明日の夜は、皆で三線弾いて歌でも歌おう」
リナさんが嬉しそうに笑う。
続く