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マイクを握るリナさんに、スポットライトが当る。
客席から沸き起こる歓声と拍手。
今日はあの声が聞こえない。
良かった。
ホッとしながらライブを終え、リナさんの手を引いてステージを降りる。
いつも特別に淹れてもらうコーヒーを飲みながら、一息入れる。
リナさんの薬指に光る指輪。
見る度に、口元がほころんでしまう。
俺が指輪を見ているのに気付いて、リナさんが笑う。
音楽とリナさんと。
好きなモノだけが存在する空間。
幸せだ。
そろそろ帰ろうとした時、一人の男が寄ってきた。
……誰?
「久しぶりだな」
! この声は!
声の持ち主は、リナさんをじっと見ている。
リナさんもじっと見つめ返している。
……誰だか分からないで、戸惑っている。
「忘れたのか? 俺の顔を?」
にじり寄りそうになる男を遮ぎって、言った。
「すみませんが、この人は以前の記憶が無いんです」
「! 記憶が……?」
「ええ」
男は、リナさんを睨みつけるように見つめ続けた。
本当に記憶を失っているのか、疑っているようだ。
リナさんは、探るように男の顔を見つめ続け。
急にこめかみを押さえてぐったりとし始めた。
前のめりに倒れそうになるリナさんを慌てて支える。
苦しそうに荒い息を繰り返すリナさん。
リナさんの記憶が、反応している。
リナさんを睨みつけている男を、改めて見る。
リナさんの失くした過去を、知っているのか?!
続く