仕事帰りにふらふらと歩く。


行き先は一つ。


彼の会社の傍にある神社。


また来てしまった。


苦笑してしまう。


嘲笑か。


こんなに自分が粘着質だったとは。



あの朝、彼に会いたい気持ちを抱えたまま、


行く当ても無く歩いて、辿り着いた神社。


それほど広くない境内に、桜の木が並んでいた。


朝の柔らかな風に、ひとひらの花びらを落として。



静かだった。




その静けさと美しさは、頭に上った熱をすっと下げた。


穏やかな幸福感と、心細さ。


相反するものが沸き起こって、涙が流れた。


下腹部へと下ろされた熱。


いつかまた、発火するのだろうか。


それとも、このまま鎮火するのだろうか。


……鎮火なんて、出来そうにない。


せめて、私の内側に残る、彼の感触が消えるまでは。



運命を信じたい。


こちらから連絡をするのは躊躇われるから。


だから、毎日ここへ来てしまう。


彼がすぐ傍にいるだろう、ここへ。


偶然でも良い。


彼と会えたなら。



音も立てずに土へと吸い込まれていく花びら。


いくつもいくつも。


静かな花びらの雨。


私の中の熱にも降り積もる。


燃料になって、再び燃え上がるのか。


このまま埋もれて、朽ちていくのか。



答えが欲しくて、そっと桜の幹に触れてみる。


ざらざらとした感触。


桜の枝には、所々葉が生えてきている。


桜越しに見上げた空には、朧月。


何もかもが曖昧な、夜。



やり切れなくて、固く目を閉じた。



続く