5
仕事帰りにふらふらと歩く。
行き先は一つ。
彼の会社の傍にある神社。
また来てしまった。
苦笑してしまう。
嘲笑か。
こんなに自分が粘着質だったとは。
あの朝、彼に会いたい気持ちを抱えたまま、
行く当ても無く歩いて、辿り着いた神社。
それほど広くない境内に、桜の木が並んでいた。
朝の柔らかな風に、ひとひらの花びらを落として。
静かだった。
その静けさと美しさは、頭に上った熱をすっと下げた。
穏やかな幸福感と、心細さ。
相反するものが沸き起こって、涙が流れた。
下腹部へと下ろされた熱。
いつかまた、発火するのだろうか。
それとも、このまま鎮火するのだろうか。
……鎮火なんて、出来そうにない。
せめて、私の内側に残る、彼の感触が消えるまでは。
運命を信じたい。
こちらから連絡をするのは躊躇われるから。
だから、毎日ここへ来てしまう。
彼がすぐ傍にいるだろう、ここへ。
偶然でも良い。
彼と会えたなら。
音も立てずに土へと吸い込まれていく花びら。
いくつもいくつも。
静かな花びらの雨。
私の中の熱にも降り積もる。
燃料になって、再び燃え上がるのか。
このまま埋もれて、朽ちていくのか。
答えが欲しくて、そっと桜の幹に触れてみる。
ざらざらとした感触。
桜の枝には、所々葉が生えてきている。
桜越しに見上げた空には、朧月。
何もかもが曖昧な、夜。
やり切れなくて、固く目を閉じた。
続く