フロアのあちこちで電話が鳴る。


新人の電話応対に耳をそばだてる。


書類が回ってくる。


来客が来る。


バタバタと過ぎて行く時間。


彼女の事を思い出す暇なんてない。


いや。


仕事にかまけて、頭の隅に追いやっていた。



よし、終わった。


PCの電源を落としながら携帯を見る。


あれから3日。


彼女からの連絡はない。


どういう事なんだろう。



あの夜、舞散る桜に酔わされた。


堕ちても良いと思った。


彼女もそのつもりだと思っていた。


だから抱いた。


深みにはまるのが怖くて、彼女が寝てる間に部屋を出たけれど。


彼女を欲しい気持ちも消えなくて。


だからといって、俺から連絡して関係を続ける勇気もなくて。


待つともなしに待っていた。



俺、自惚れてんな。


彼女は俺に惚れてるんだと思ってた。


でもそうじゃなかった。


一時の気の迷いだったのだ。


春になると人も発情する。


たまたま傍にいたのが俺だったんだ。



……何だか裏切られたような、やり切れない思いがこみ上げてくる。


俺の方が彼女に傾いている。


けれど、彼女にその気がないのなら、もうここで終わらせよう。



首を振って、傍にいた同僚に声をかける。


「飲みに行こうか」


気分転換でもしよう。



続く