電気のスイッチを入れる。


休日のオフィスはガランとして、誰もいなかった。


少しホッとして、パソコンを立ち上げる。


そのまますぐ家に帰るなんて出来やしない。


仕事の資料を出して、キーボードを叩き始める。




モニターに彼女の目が映る。


唇が映る。


白い肌。


滑らかで吸い付きそうな。


快感に押し出される声にならない声。


冷たかった指先が、次第に熱を帯び俺の髪を梳く。


俺の唇や指に、敏感に反応してしなる腰。



……。


手が止まってる。


駄目だ、仕事が手に付かない。


煙草吸いに行こう。



煙草に火を点ける。


缶コーヒーを開け、一口飲む。


……。


ぼんやりしてしまう。


そして思い浮かべる彼女の肢体。


体中で俺を求めてきた。


絡み付いてくる視線。


俺以外何も見えないみたいに。


何度もキスをせがんだ。


これが最後の夜のように。



ぐっすりと彼女が眠ったのを確認して、そっとドアを閉めた。


これが最後。


それで良いんだ。


これ以上、俺が飲み込まれないように。


ズルイかもしれないけれど。


もう一度彼女を抱いたら、本当に堕ちてしまう。


戻れなくなってしまう。


なのに。


俺の中の動物が、彼女を求めていた。



もう一度、触れたい。



落ちかかった灰を、慌てて灰皿へ落とす。


欲しい気持ちと、抑える気持ちと。


初めての感覚を、どうしていいか分からずに窓の外を見る。


桜の花が、上り始めた太陽の光に白く浮き上がっている。


暗闇の中で仄かに白い光を放っていた、彼女の体みたいに。



続く