1
見知らぬ部屋のベッドで目覚める。
遮光カーテンの隙間から、日差しが漏れている。
薄暗い中で、隣にいる人に手を伸ばす。
伸ばす。
伸ばす。
指先が、ベッドの縁を感じる。
隣にいるべき人は、いない。
先に帰ってしまった。
伸ばした手をのろのろと滑らせて戻す。
温みすらないシーツ。
どのくらい前に帰ったんだろう。
昨日本当に彼に抱かれたんだろうか。
……愚問。
体に彼の痕が残ってるじゃないか。
私の足りない部分に埋め込まれた彼の一部。
繋がった体の一部分が発熱し、その熱が体中を巡り頭を痺れさせる。
思い出せば、肌が泡立ち発汗する程。
一度与えられて、もう次はないかもしれない。
そう思えば思うほど、少しでも長く余韻を味わいたくなる。
……もう一度欲しい、今、彼が。
暗闇に目が慣れて、部屋の中が見えてくる。
隣に転がるもう一つの枕は、誰かが使っていたはずのシワや窪みが陰影を作り。
引き寄せて顔を埋めると冷たくて、微かに煙草の匂いがした。
ベッドから起き上がり、冷たい空気の中立ち上がる。
小さなテーブルの上においてある灰皿。
煙草の吸殻が2本。
枕と同じ匂いがする。
吸殻と、体の中心に残る彼の残像。
何時間か前までは、彼は私と一緒にいたのだ、ここに。
吸殻を口に咥えて、鏡に自分を映す。
白く浮き上がる体。
自分の手で自分の体をゆっくりとなぞる。
彼の唇が降りていった。
胸元に、桜の花びらと同じ大きさの赤い痣。
痛かった。
何も考えられなくなって、皮膚から伝わる波だけを感じていた。
煙草を咥えたまま、カーテンを開ける。
一気になだれ込む白い光。
自分の体が浮き上がるように光を白く反射し、ガラスに映っている。
彼に抱かれて、世界で一番綺麗になった体。
誰かに見られても構わないぐらい、自信がある。
眼下には、満開の桜の花が風に揺れている。
胸元の痣が、桜に反応して熱を持つ。
続く