見知らぬ部屋のベッドで目覚める。


遮光カーテンの隙間から、日差しが漏れている。


薄暗い中で、隣にいる人に手を伸ばす。


伸ばす。


伸ばす。


指先が、ベッドの縁を感じる。


隣にいるべき人は、いない。



先に帰ってしまった。



伸ばした手をのろのろと滑らせて戻す。


温みすらないシーツ。


どのくらい前に帰ったんだろう。


昨日本当に彼に抱かれたんだろうか。


……愚問。


体に彼の痕が残ってるじゃないか。


私の足りない部分に埋め込まれた彼の一部。


繋がった体の一部分が発熱し、その熱が体中を巡り頭を痺れさせる。


思い出せば、肌が泡立ち発汗する程。


一度与えられて、もう次はないかもしれない。


そう思えば思うほど、少しでも長く余韻を味わいたくなる。


……もう一度欲しい、今、彼が。



暗闇に目が慣れて、部屋の中が見えてくる。


隣に転がるもう一つの枕は、誰かが使っていたはずのシワや窪みが陰影を作り。


引き寄せて顔を埋めると冷たくて、微かに煙草の匂いがした。


ベッドから起き上がり、冷たい空気の中立ち上がる。


小さなテーブルの上においてある灰皿。


煙草の吸殻が2本。


枕と同じ匂いがする。


吸殻と、体の中心に残る彼の残像。


何時間か前までは、彼は私と一緒にいたのだ、ここに。



吸殻を口に咥えて、鏡に自分を映す。


白く浮き上がる体。


自分の手で自分の体をゆっくりとなぞる。


彼の唇が降りていった。


胸元に、桜の花びらと同じ大きさの赤い痣。


痛かった。


何も考えられなくなって、皮膚から伝わる波だけを感じていた。



煙草を咥えたまま、カーテンを開ける。


一気になだれ込む白い光。


自分の体が浮き上がるように光を白く反射し、ガラスに映っている。


彼に抱かれて、世界で一番綺麗になった体。


誰かに見られても構わないぐらい、自信がある。



眼下には、満開の桜の花が風に揺れている。


胸元の痣が、桜に反応して熱を持つ。



続く