36


昼時で、忙しさのピークの親父の店。


俺もリナさんもレイナさんも、何故かトモヤも走り回っている。


「こらっ! あんたは邪魔だからリナさんにまとわり付くんじゃないの!」


皿を持つ腕を引っ張られる。


「カイト、こないだテレビ見たよ。あんまり映ってなかったなぁ」


「あーありがとう」


「あのコは話せないんだろう? 何で歌えるんだ?」


「さぁ」


この会話を何回繰り返したか。


あーもー、俺に聞くなー!



いつの間にか噂が流れていたらしく、親父の店にもたくさんの客が来るようになっていた。


ごった返す店内。


店の外にも並ぶくらい。


今までこんな事なかった。


ありがたいけど……。


常連が毎日来てのんびり過ごす、地元の定食屋。


あのだらだら酒を飲みながら過ごす雰囲気はもうない。


しかも、あの声の主も来てるかもしれないのだ。


気を抜く事無く、リナさんと客席に目を配りながら、走り回る。




客を追い出して、皆で飯を食う。


気を張りすぎて、何だかぐったりだ。


皆も忙しすぎて体力消耗してるみたいだ。


元気なのはトモヤと、売上げが上がって喜んでる母さんだけ。



言葉少なに飯を口に運んで食事を終わらせ、何となく外に出た。


少しずつ春に近づいて、太陽の光が強くなっている。


暑い。


空は青く澄んでいて、白い雲が流れている。



良い天気だなぁ。


そういえば、店の手伝いと小学校、クラブばっかりで、最近散歩もしてないな。


よし、夕飯時まで散歩しに行くか。



背伸びをして深呼吸する。


店からリナさんとトモヤが外に出てきた。


「何だよカイト! 一人で何してんの?」


「何にも。散歩行こうか」


「行く!」


トモヤがはしゃぐ。


リナさんも嬉しそうに笑う。



こめかみから、汗が湧き出る。



続く