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ライブが終わって、リナさんが心配げな顔で覗き込んできた。


『大丈夫? 具合、悪かった?』


「いや……」


『顔色、悪い』


「うん、大丈夫」


『お水、持ってくる』


バーカウンターに行こうとしたリナさんの手を引き止める。


「大丈夫だから、ここにいて」


ライブは終わったけど、客がまだ引かない。


さっき聞こえた声が頭をぐるぐる回る。


今リナさんを一人にしちゃいけない。


リナさんは不思議そうな顔で頷いて隣に腰掛け、俺の顔を覗き込んでいる。


心配させないように微笑みかけながら、意識はずっとフロアに向かっている。



誰だ?


誰があんな言葉を叫んだんだ?



余りの言葉に動揺してしまい、今日のライブは失敗が多かった。


歌詞を間違える。


ピアノをとちる。


最悪だ。


リナさんが心配するのも当たり前だ。


来週はちゃんとやらなきゃ。



心配げな顔のリナさんに向かって言う。


「何かたくさんのお客さんが入って緊張しちゃったみたいで。恥かしいよ」


それを聞いたリナさんが、ホッとしたように笑う。



まだあの声の主はクラブの中にいるんだろうか?


何が目的かは分からないが、悪意があるのは確かだ。


何とかして声の主を探さなきゃ。


もしあれがリナさんに向けられた言葉だったなら。


リナさんを守れるのは、俺しかいないんだから。



続く