34


案の定、翌週のクラブは身動き出来ないほどの客で埋まった。


何時にも増して熱気が凄くて、アルコールが飛ぶように売れる。


バーカウンターの兄さんもずっと手を動かしている。


見知った顔の常連が、片手で顔を仰ぎながら、口で「暑い」と言ってきた。


こんな状態じゃ空調も利かない。



ステージにリナさんをエスコートする。


フロアからの熱気と照明の熱で、ステージに上がった瞬間に汗をかく。


いつものようにピアノを弾き始める。


リナさんの声が響く。


リナさんの低音に、俺の声を重ねる。


フロアから歓声と拍手が沸き起こる。


クラブ全体が音楽で繋がる瞬間。


いつも鳥肌が立つほど興奮する。



最後の一音を空中に響かせて、曲が終わる。


フロアから感嘆の溜息と拍手と歓声が起こる。


いつも感動する……。


?!


歓声に混じって、何か聞こえた。


悪意のある、声。


リナさんを見る。


リナさんは気付いていないようだ。


俺を見て、嬉しそうに笑っている。


何事も無かったように、リナさんに微笑みかける。



誰だ?


何だ?



フロアに神経を張り巡らせながら、2曲目のイントロを弾き始める。


フロアは静まり返って、何も聞こえない。


時々、氷が溶けてグラスの中でカランと音を立てるくらいだ。


2曲目が終わる。


歓声が上がる。


それに混じって、さっきの声が聞こえる。


何て言ってるんだ?


何だ?!


……。


!!


なっ……!?



背中に冷や汗が流れる。


リナさんは、気付いていない。




続く