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「カイトはさ、リナちゃんの事好きなんだろ?」



口にしていた泡盛のグラスを落としそうになる。


リョウイチさんとレイナさんの家。


慌てて周りを見渡すと、トモヤはぐっすり寝入っていて。


レイナさんとリナさんは奥の台所で、笑いながら洗い物をしている。



「なっ……?」


リョウイチさんが赤い顔でにやりと笑う。


「今日のライブ見ててすぐに分かったよ」


「何でですか?!」


「レイナの時もだったんだけどさぁ、カイトは歌う時に感情がもろに視線とか声とかに出るんだよ」


そ、そうなのか?


「全身から想いがほとばしってるっていうか」


「……感情だだ漏れって事ですか……?」


「だだ漏れ」


カッと顔が熱くなる。


あんな大勢の人の前で、感情だだ漏れだったのか?!


しかもテレビカメラも入ってたのに。


「あの中で気付いてないのはリナちゃんだけかもな」


「どうしてです?」


「カイトに背中向けてたじゃん」


そうか。


「でも……」


「?」


「いや、なんでもない」


リョウイチさんがグラスに口をつけて黙った。



台所のリナさんを見る。


俺に背中を向けて、皿を拭いている。


見慣れた華奢な背中。


あの背中に向けて歌っていた。


気付いてないのか。


気付いて欲しいような、気付いて欲しくないような。



あの心地良い空間がいつまでも続くならば、どっちでも良い。


それは本心だけれど。


リョウイチさんにバレてしまうくらい、感情がだだ漏れなら。


きっといつか気付くはず。


その時リナさんは、どう思うんだろう?



続く